バーやスナックなど、深夜に酒類を提供する飲食店を営業するためには、「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。深夜に酒類を提供する飲食店に対しては、一般的な飲食店営業許可とは異なるルールや規制が存在し、適切な手続きを踏むことが求められます。
本記事では、東京都内で深夜酒類提供飲食店営業の許可を取得する方法について、具体的な手順や注意点を詳しく解説します。
目次
深夜酒類提供飲食店営業とは
「深夜酒類提供飲食店営業」とは、深夜0時から翌日午前6時までに酒類を提供する飲食店を対象とする営業形態のことを指します。たとえば、バーを営業する場合、深夜0時までに営業を終えるのであれば、深夜酒類提供飲食店の届出をする必要はありません。一方、深夜0時以降にも営業する場合は届出が必要で、営業を開始する10日前までに、「深夜酒類提供飲食店営業」の届出を東京都公安委員会(窓口は警察署)に提出しなければなりません。
深夜まで営業しても届出が必要ない場合
深夜まで営業する飲食店であっても、営業中の大部分の時間帯に主食を提供するお店の場合は、届出が不要です。主食というのは、「社会通常上主食と認められる食事」のことを言い、米飯類、パン類、麺類、ピザ、お好み焼きなどです。たとえば、深夜まで営業しているラーメン屋さんでビールを提供するからといって、届出が必要になるわけではありません。
ちなみに深夜まで酒類を提供するだけでなく、お客さんにダンスをさせるクラブや、音楽の演奏を聞かせるライブハウスなど、お客さんを遊興させる場合は、深夜酒類提供飲食店の届出ではなく、「特定遊興飲食店営業」の許可を取る必要があります。
また、接待をともなう営業をする場合には、「風俗営業」の許可が必要になり、原則として午前0時までしか営業できません。接待をともなう営業のおもな具体例は、キャバクラやホストクラブなどです。
届出に必要な要件
深夜に酒類を提供する飲食店を営業するには、いくつかの基本条件を満たす必要があります。物件を借りる場合は、あらかじめ要件を満たしているかどうかを確認しておかなければなりません。
用途地域
住居集合地域内では、酒類を提供する飲食店を深夜まで営業することはできません。営業できる地域は、商業地域、近隣商業地域、工業地域、準工業地域の4つに限られます。静かな場所に隠れ家的なバーがあったりすると素敵ですが、表参道や青山のような華やかな街であっても、表通りから少し中に入っただけで住居専用地域だったりしますから、深夜までバーを営業したい場合は、用途地域をよく確認してから物件を決めなければなりませんね。
構造
次はお店の構造です。下記の基準が守られている必要があります。
・客室の床面積は、一室の床面積を9.5㎡以上とすること。ただし、客室の数が一室の場合は、この限りでない。
・客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
・善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
・営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持されるための構造または設備を有すること。
手続きの流れ
深夜酒類提供飲食店営業の許可を取得するための手続きの流れは以下の通りです。
1. 飲食店営業許可の取得
警察署に届出をする前に、あらかじめ保健所から飲食店営業許可を取っておく必要があります。警察署に提出する書類には、飲食店営業許可の写しを添付することになっています。
飲食店営業許可を取る方法については、こちらの記事をご覧ください。
【解説】渋谷区で飲食店の営業許可を取る方法
2. 所轄の警察署にあらかじめ相談がおすすめ
深夜酒類提供飲食店営業の届出をする前に、営業する店舗の所在地を管轄する警察署に、事前に相談しておくと安心です。営業開始予定のお店が、じつは風俗営業許可が必要な営業形態だった、ということにでもなったら、その場所では営業できない可能性がありますし、その他の要件も異なってくるからです。提出が必要な書類についても、詳しい説明を受けることができます。
3. 書類の作成
届出の際には、以下の書類が必要です。
警察署によってローカルルールが存在することがありますので、このほかにも提出が必要な書類がないかどうか、警察署との相談時にあらかじめ聞いておくことをおすすめします。
・深夜における酒類提供飲食店営業・営業届出書:管轄の警察署で取得できるほか、警視庁ウェブサイトからダウンロード可能です。
・営業の方法を記載した書類:管轄の警察署で取得できるほか、警視庁ウェブサイトからダウンロード可能です。
・営業所の平面図
・住民票(本籍記載のもの)の写し
・定款の写し(法人の場合)
・法人登記事項証明書(法人の場合)
・役員全員の住民票(法人の場合)
・飲食店営業許可証のコピー
4. 書類の提出
必要書類が揃ったら、所轄の警察署に書類を提出します。要件を満たしているかどうかや、書類の不備などがチェックされます。問題なければその場で受理され、「申請・届出受領書」が交付されます。これを受け取って届出は完了となります。
5. 営業開始
許可証のようなものは出ませんので、届出が受理されると、届出の日から10日経てば、深夜酒類提供飲食店の営業を始めることができます。なお、飲食店営業許可はすでに取っていますので、10日経たなくても、深夜0時までであれば、飲食店として営業することは可能です。
営業開始後に注意すること
深夜酒類提供飲食店の営業を届け出るよう規制している風営法の目的のひとつは、「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」ことです。したがって、以下のことは禁止されていて、罰則もあります。青少年を守るために遵守しましょう。
18歳未満の者の従事と入店
・午後10時から翌日午前6時までの時間において、18歳未満の者を客に接する業務に従事させること。
・午後10時から翌日午前6時までの時間において、18歳未満の者を客として立ち入らせること。ただし、保護者同伴の場合はかまいません。
20歳未満の飲酒・喫煙
民法改正で成人年齢が引き下げられ、18歳から成人ということになりましたが、20歳になるまでは飲酒と喫煙が禁止されています。深夜酒類提供飲食店にかぎった話ではありませんが、20歳未満のお客さんにお酒やタバコを提供しないよう注意しましょう。
行政書士に依頼するメリット
深夜酒類提供飲食店の営業を開始するには、届出さえすればいいのですが、用途地域を確認したり、図面を書いたりしなければならず、なかなか大変な作業です。警察署の求める内容になっていないと受理してもらえず、何度もやり直しになってしまいます。
行政書士は、警察署に提出する書類の作成や、届出書類の提出を代行することができます。ご自身でやってみて、もし少しでも不安があったり、面倒だと感じたら、行政書士に依頼することをおすすめします。行政書士は警察署に提出する書類を作成するプロです。警察署とのやり取りも本人に代わっておこないますので、面倒なことをする必要なく、スムーズに、早く、営業を開始することができます。
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