飲食店で外国人をアルバイトとして雇用する在留資格はありますか?

相談者(40代女性)

飲食店を経営しています。最近は人手不足のためか、ホールスタッフのアルバイトを募集してもなかなか人が集まらなくて、シフトのやりくりに毎日苦労しています。そのため、今後は外国人のアルバイトも雇用したいと考えているのですが、外国人をアルバイトとして雇うことができる在留資格はありますか?

また、店長やエリアマネージャーとして正社員への登用を考えた場合、在留資格の変更が必要ですか?

回答者:行政書士

飲食店で外国人をアルバイトとして雇用することは可能です。もっとも一般的なのは、「留学」や「家族滞在」の在留資格で日本に滞在する外国人が、「資格外活動」という許可を取って働く方法です。ただし、週に28時間以内までしか働けないなどの制約がありますので、これを超えないよう注意が必要です。

一方、フルタイムで正社員として、店長やエリアマネージャーなどの正社員に登用して働いてもらうためには、「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」などのいわゆる就労ビザへの変更を検討する必要がありますね。

飲食店でアルバイトができる在留資格

原則として外国人が日本で働くためには、就労ビザ(働くための在留資格)を取得しておく必要があります。就労ビザについては、雇用する会社が要件を満たしているかどうかや、仕事の内容が基準に合致しているかどうか、働こうとしている外国人が基準にあてはまるかどうかなど、入管の厳しい審査を通る必要がありますので、日本人のアルバイトを雇うような感覚では人材を採用することができません。

では、日本人と同じように、飲食店で注文を取ったり、料理を運んだりする外国人をアルバイトとして雇うことはできないのかというとそうではありません。外国人がアルバイトをするときによく使われているのが「資格外活動」の許可です。

「留学」「家族滞在」の「資格外活動」

日本に滞在する外国人の中には、働くためではない在留資格で滞在している人もいます。日本の大学や専門学校で学ぶために来日している留学生は「留学」という在留資格で来ています。また、就労ビザを取って日本に来ている外国人の配偶者や子は「家族滞在」という資格で滞在しています。これらの在留資格は、基本的に働くことは認められていませんが、週に28時間以内であれば収入を得る活動をする許可を取ることができます。それが「資格外活動」の許可です。この許可を取っている外国人については、飲食店のホールスタッフのアルバイトとしても採用することができます。入管の厳しい審査を経る必要もありません。

採用時に注意すべき在留カード

応募者が日本人であれ、外国人であれ、アルバイトを雇うときにやるべきこととして大事なのは本人確認です。業種によっては働くことができない年齢が決められていたりしますので、注意が必要ですね。通常は運転免許証などで確認します。

外国人をアルバイトとして雇う場合は、必ず「在留カード」を見せてもらい、よく確認しましょう。

在留資格

「在留カード」では、「在留資格」欄に「留学」または「家族滞在」と書かれているかどうかを確認してください。

在留期間

「在留カード」には、いつまで日本に滞在することができるかが記されています。一番下の欄に「このカードは〇年〇月〇日まで有効」と書かれていますので、まずはこの有効期間が満了していないかどうかを確認してください。もし満了していたら、そもそも日本にいることができません。また、これから雇用するにあたって、その満了日までが働ける期限になりますので、すぐに期限が来て働けなくならないよう確認しましょう。

資格外活動の記載

在留資格が「留学」または「家族滞在」の場合、「就労制限の有無」欄には「就労不可」と書かれています。通常は就労できない在留資格なのですが、「資格外活動」許可を取ることで働くことが可能になります。裏面を見てもらうと、下のほうに「資格外活動許可欄」という欄があります。ここに「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と書かれていれば、資格外活動の許可を得ているということになります。

風俗営業店での勤務は不可

「在留カード」裏面に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」とありましたように、キャバクラなどのように接待を伴う営業をするお店や、パチンコ店やゲームセンター等でも働くことができません。これらのお店においては、接客の仕事だけでなく、たとえ清掃の仕事だけでもすることができませんので、注意が必要です。

雇用中に注意すべきこと

実際にアルバイトとして雇用したあとにも注意しておかなければならないことがありますのでお伝えします。

週28時間を超えないように注意

勤務時間が週に28時間を超えないようにしなければなりません。この28時間とは、どの曜日から数えても28時間以内になっていることを指しますので、シフトを組む際には計算を間違えないよう、注意しましょう。

なお、本人がアルバイトを掛け持ちしている場合でも、すべてのアルバイトの合計で週28時間以内になっていないといけませんので、合計で28時間を超えていないことをしっかり本人に確認しておきましょう。

なお、学校が長期休みになる夏休み期間中などについては、週28時間以内という制限を超えて、1日8時間以内までなら働くことができるようになります。

深夜勤務は原則不可

そもそも外国人であるかどうかにかかわらず、労働基準法によって、満18歳に満たない者を、午後10時から午前5時までの間に勤務させてはいけないことになっています。アルバイトの学生が18歳未満の場合には、シフトを組むときに要注意です。

また、「留学」の場合、もともとの在留資格に関する活動である勉学や研究などの活動が妨げられることがないように配慮する必要がありますので、18歳以上であっても、午後10時以降の深夜まで働かせるのは避けたほうがよいでしょう。

正社員への登用には就労ビザへの変更を

「留学」の在留資格における資格外活動許可で働いていた人が留学先の学校を卒業してしまったら、もうその時点で資格外活動では働けなくなります。日本で働き続けるためには、「留学」の在留資格から就労ビザに変更する必要があります。その場合、入管に在留資格変更許可申請をすることになります。この変更許可申請は、外国人本人ができるのはもちろんですが、雇用する会社が代わりに手続きをすることも多いです。

「留学」から変更する先の在留資格としては、以下のような在留資格が候補になってきます。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定活動46号
  • 特定技能(外食業)
  • 技能(料理の調理または食品の製造)

技術・人文知識・国際業務

さまざまな在留資格がある中で、「技術・人文知識・国際業務」は、ホワイトカラーの在留資格としてもっとも一般的に使われているもので、日本の企業で働く外国人の多くがこの資格で就労しています。ただし、飲食店での注文取りや料理の提供といったホールスタッフとしての仕事だけではこの資格を取ることが難しいです。「技術・人文知識・国際業務」では単純作業に従事することができないからです。アルバイト時代とは違う、たとえばエリアマネージャーとして複数店舗にまたがって人材管理や在庫管理などに携わるような仕事や、マーケティングに関わるような仕事が、この在留資格で従事できる業務のイメージです。外国人ならではの知識や語学力を生かして外国人観光客の応対をすることも可能です。

おもな要件

  • 日本または海外の大学(短大含む)や専門学校を卒業
  • または10年以上の職歴がある
  • 日本人に支払うのと同等以上の報酬

特定活動46号

日本の大学等に留学生として学びに来ていた学生が、日本の企業等に就職することを想定した在留資格です。大学等で学んだ知識を生かすことを前提とした仕事である必要はありますが、業務内容は技術・人文知識・国際業務よりも幅広く認められています。ですので、部分的に単純作業にも従事することもできます。厨房での皿洗いや清掃のみに従事することは認められません。

おもな要件

  • 日本の大学、大学院、短大、高等専門学校、専修学校を卒業
  • 高い日本語能力(日本語能力試験N1以上など)
  • 日本人に支払うのと同等以上の報酬

特定技能「外食業」

日本の人手不足を補うために2019年4月にできた在留資格です。特に深刻な人手不足となっている産業分野について外国人労働者を受け入れています。受け入れ分野は2025年7月現在で16分野ですが、「外食業」分野はこのうちの一つです。

「外食業」の特定技能では、飲食物の調理や接客などのホールスタッフとしての業務を始め、従業員のシフト管理や指導などの仕事が想定されており、店舗の運営に関する幅広い業務に従事することができます。

おもな要件

  • 外食業特定技能測定試験に合格(本人)
  • 日本語能力試験N4以上等(本人)
  • 外食業分野の外国人受け入れに関する協議会に加盟(会社)
  • 登録支援機関への委託(会社)

技能(外国料理の料理人)

飲食店で働くことができる在留資格として「技能」というものもあります。特定の分野において熟練した技能を要する仕事に適用される在留資格です。

外食業においては、外国料理の料理人がこの在留資格を使うことができます。フランス料理店でフランス料理をつくるシェフなどがこれにあたります。フランス料理のシェフが日本料理店で日本料理を作るとか、ファミリーレストランの厨房で調理をするようなことは想定されていません。もちろん、客の注文を取ったり、皿洗いや清掃といった業務をおもな仕事とすることはできません。この資格には、原則として10年以上の実務経験が必要ですので、アルバイトをしていた留学生が「留学」から「技能」に移行することはあまり考えられないことかもしれませんね。

おもな要件

  • 10年以上の実務経験
  • 日本人に支払うのと同等以上の報酬

まとめ

これまで見てきましたように、飲食店のアルバイトとして外国人を採用することはできますが、週28時間までしか働けないといった制限があります。一人の外国人がいくつかのアルバイトを掛け持ちしていた場合、そのすべての労働時間を合計しても28時間を超えない必要がありますので、雇用する立場の会社はその点を確認してあげる必要がありますね。

「留学」の在留資格で来日している留学生は、「資格外活動」の許可を得れば、アルバイトをすることができますが、学校を卒業してしまうと「資格外活動」では働けなくなります。引き続き、フルタイムで正社員として働いてもらいたい場合には、在留資格を就労ビザに変更する必要があります。就労ビザには、ホワイトカラーの代表的な資格である「技術・人文知識・国際業務」や、日本の大学等を卒業して幅広い業務に従事できる「特定活動46号」、外食業の現場業務に特化した「特定技能(外食業)」などがあります。どのような業務に従事してもらいたいかによって、取得すべき在留資格が異なってきますので、外国人本人の意向をよく確認したうえで進めましょう。

就労ビザ取得の専門家である行政書士は、在留資格ごとのメリットやデメリット等について熟知しています。どの在留資格を取得したらいいのか、いつごろから申請の準備をしたらいいのか、といった疑問点を相談することができます。

面倒な手続きのいっさいを任せてしまうこともできますので、行政書士という専門家を活用することも検討してみてはいかがでしょうか。

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