技術・人文知識・国際業務ビザの更新手続きガイド

相談者:20代外国人男性

5年前から日本のIT企業で働いています。そろそろ在留期限が切れるため、更新手続きをしておくよう会社から言われました。日本に来るときには会社の人事担当者がビザの手続きをしてくれたので、入管への手続きを自分でするのは今回が初めてです。更新手続きがちゃんとできるか心配です。用意しなければいけない書類や、手順などを教えてもらえますか?

回答者:行政書士

わかりました。初めて在留資格を取得するときにくらべると、更新手続きは心配するほど難しくはないので安心してください。勤務先に用意してもらう書類もありますので、担当者のかたに早めに書類をもらっておくようにしてくださいね。途中で転職している場合は、会社側が用意する書類も多くなりますので、より早めに準備を始めたほうがよいでしょう。

日本でのキャリアと生活を続ける上で、在留資格(ビザ)の更新は避けて通れない、重要な手続きです。特に、多くの方が取得している「技術・人文知識・国際業務」ビザの更新は、あなたの日本での未来を左右する一大イベントと言えるでしょう。

「書類がたくさんあって難しそう…」「もし不許可になったらどうしよう…」そんな不安を抱えていませんか?

ご安心ください。ビザの更新手続きは、ポイントを正しく理解し、一つひとつ着実に準備を進めれば、決して怖いものではありません。

この記事では、ビザ更新の申請準備を始めてから、新しい在留カードを手にするまでのプロセスを分かりやすく解説いたします。

 

1. ビザ更新の基本ルール「いつ、どこで、誰が」

まずは、手続きの基本的なルールを正確に把握することから始めます。

【いつ】申請すべきか?ベストなタイミングとは

在留期間の更新申請は、在留カードに記載されている在留期限の3か月前から行うことができます。

申請してから許可が出るまでの標準処理期間は、2週間から1か月と比較的早いのですが、「できるだけ早く行動を開始する」ことが大切です。理想は、期限の2か月前、遅くとも1か月前には申請を完了させてください。期限ギリギリの申請は、万が一書類に不備が見つかった場合に対応できなくなるリスクがあり、精神的なプレッシャーも大きくなります。

<豆知識:特例期間について>
申請が受理されると、お持ちの在留カードの裏面に「在留期間更新許可申請中」というスタンプが押されます。このスタンプがあれば、もし審査中に在留期限が過ぎてしまっても、審査結果が出る日または在留期限から2か月後のいずれか早い日までは、適法に日本に滞在し、働くことができます。だからといって油断せず、早めの申請を心がけましょう。

【どこで】申請するのか?

申請場所は、あなたが住んでいる地域を管轄する地方出入国在留管理局(通称:入管)です。例えば、東京都に住んでいるなら東京出入国在留管理局、大阪府に住んでいるなら大阪出入国在留管理局となります。会社の所在地ではなく、あなたの住所が基準になるので注意してください。

管轄の入管は、以下の出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。
出入国在留管理庁>地方出入国在留管理官署

【誰が】申請できるのか?

申請は、以下のいずれかの人が行うことができます。

・申請者本人(あなた自身)

・会社の職員(申請取次者)

・弁護士・行政書士

あなたの会社には、社員のビザ手続きを代行する「申請取次者」の資格を持つ人事担当者がいるかもしれません。もし会社が代行してくれるのであれば、平日に仕事を休んで入管の長い列に並ぶ必要がなくなり、あなたの負担は大幅に軽減されます。まずは人事担当者に、会社で申請を代行してもらえるか確認してみましょう。

 

2. 申請前の重要セルフチェック5項目

書類を集め始める前に、ご自身の状況が更新の条件を満たしているかを確認しておきましょう。
以下の5つの項目を正直にチェックしてください。

1. 仕事内容はビザの範囲内ですか?

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、専門的な知識や技術を活かす仕事に対して許可されています。入社時から仕事内容が変わっていないか、もし変わっている場合でも、その内容はビザの範囲内かを確認しましょう。

OKな例:

・システムエンジニアとして入社し、現在はプロジェクトリーダーに昇進した。
・翻訳担当として入社し、現在は海外マーケティングも兼任している。

注意が必要な例:

・ITエンジニアとして入社したが、現在は工場のライン作業を主に担当している。
・通訳として入社したが、主な仕事は店舗でのレジ打ちや品出しになっている。

 

もし、仕事内容が専門業務から大きく外れている場合、「更新」ではなく「在留資格変更許可申請」が必要になるか、最悪の場合、更新が認められない可能性があります。

2. 税金(特に住民税)をきちんと納めていますか?

これは、更新審査で最も厳しく見られるポイントです。

住民税は、前年の所得に対して課税され、翌年の6月頃から納付が始まります。
とくに転職を経験した方は要注意です。会社を辞めると、給与から天引き(特別徴収)されていた住民税が、自分で納付書を使って支払う方法(普通徴収)に切り替わります。この切り替えに気づかず、納付を忘れて未払いになっていると不許可の原因となりえます。

自分の住民税の支払状況に少しでも不安がある方は、すぐに市区町村の役所に問い合わせて確認してみてください。

3. 社会保険に正しく加入していますか?

会社員であれば、会社の健康保険と厚生年金に加入しているはずです。給与明細で、毎月保険料が引かれていることを確認しましょう。とくに、転職などで会社に所属していない期間があった場合は、その期間に国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を納付しているかどうかを確認する必要があります。

4. 安定した収入はありますか?

日本で独立して生活できるだけの安定した収入があることも重要な条件です。あなたの給与が、同じ仕事をしている日本人と比較して不当に低くないか、という点も見られます。

5. 届出義務を果たしていますか?

引っ越しをして住所が変わった時や、転職して会社が変わった時は、14日以内に入管への届出が必要です。これらの届出を忘れていると、更新審査に悪影響を与える可能性があります。

 

3. 必要書類チェックリスト(カテゴリー別)

ご自身で準備する書類と、会社に依頼する書類とがあります。
会社のカテゴリー別に解説します。

まずは会社のカテゴリーを確認しましょう

入管は、会社の規模や信頼性に応じて、提出が必要な書類を4つの「カテゴリー」に分けています。このカテゴリーによって、あなたが準備するべき書類(特に住民税の証明書)が変わってきます。 まずは、あなたの人事担当者に、自社がどのカテゴリーに属するのかをまず確認してください。

会社のカテゴリー 該当する企業例 住民税に関する証明書の提出
カテゴリー1 上場企業、保険業を営む相互会社など 不要
カテゴリー2 年間の源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業 不要
カテゴリー3 カテゴリー2以外の源泉徴収義務がある企業(多くの中小企業) 必要
カテゴリー4 上記以外の企業(設立したばかりの会社など) 必要

 

【全カテゴリー共通】必ず準備する書類

以下の書類は、会社のカテゴリーに関わらず、全員が準備する必要があります。

1. 在留期間更新許可申請書(1通)

入管のウェブサイトから最新の様式をダウンロードします。

「申請人等作成用1・2」のページをご自身で記入します。学歴、職歴などを正確に記入してください。

「所属機関等作成用1・2」のページは会社が記入します(後述)。

2. 写真(縦4cm×横3cm、1枚)

申請前6か月以内に撮影した、鮮明な証明写真。背景は無地で、帽子はかぶらないでください。

写真の裏にあなたの名前を書き、申請書の写真欄に貼り付けます。

3. 返信用封筒

定形封筒に宛先を明記したうえ、簡易書留に必要な額の郵便切手を貼付したもの。

4. パスポートと在留カード

申請時に、窓口で原本を提示します。

 

【カテゴリー3・4の方のみ】ご自身で準備する追加書類

あなたの会社がカテゴリー3またはカテゴリー4に該当する場合、以下の書類を追加で準備する必要があります。

4. 住民税の「課税証明書」と「納税証明書」(各1通)

その年の1月1日に住んでいた市区町村の役所で発行されます。もし2025年中に引っ越しをした場合でも、2025年度の証明書は、2025年1月1日に住んでいた市区町村で取得する必要があります。必要な年度は直近1年分です。

・「課税証明書」:1年間の所得と、課税された住民税の額が記載されています。

・「納税証明書」:課税された税金を、すべて納め終わっているか(未納額がないか)を証明するものです。

必ず「課税」と「納税」の両方を取得してください。

 

会社に依頼する書類(カテゴリー別)

ここからは、会社の人事担当者様へのアドバイスも交えながら解説します。外国人従業員の皆様は、ご自身の会社のカテゴリーに応じて、以下の書類を人事担当者にお願いしてください。

1. 在留期間更新許可申請書(所属機関等作成用)【全カテゴリー共通】

申請書の「所属機関等作成用1・2」のページは、会社が記入する必要があります。

 

人事担当者様へのアドバイス

従業員数や資本金などの会社情報は、登記事項証明書や決算書と一致するように正確に記入してください。

最も重要な項目は「10.活動内容詳細」です。ここは審査官が、従業員の仕事がビザの条件に合っているかを判断する重要なポイントです。

「システム開発」「貿易業務」のような漠然とした書き方ではなく、「Java、Pythonを用いた金融機関向け業務システムの要件定義、設計、開発業務」「当社製品(電子部品)の東南アジア市場への新規販路開拓に関するマーケティング、現地企業との交渉、契約書作成及び翻訳業務」のように、誰が読んでも仕事の専門性が分かるように、具体的かつ詳細に記述してください。

 

2. カテゴリーによって会社が準備する書類

<カテゴリー1の場合>
・四季報の写しなど、上場を証明する文書

<カテゴリー2の場合>
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し

<カテゴリー3の場合>
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し

<カテゴリー4の場合>
・給与支払事務所等の開設届出書の写し
・直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) 、または
・納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料

 

3. 転職して初めての更新の場合に追加で必要になる書類

もし、あなたが今の会社に転職してきて、初めてのビザ更新を迎える場合は、審査がより慎重になります。そのため、以下の書類の提出が求められます。

・雇用契約書の写し

・会社の登記事項証明書

・直近年度の決算報告書の写し

・会社案内(パンフレットなど)

 

人事担当者様へのアドバイス

転職してきた従業員の初回更新は、入管にとってはその従業員と貴社の結びつきを初めて審査する機会です。「この会社は安定していて、この従業員に専門的な仕事をきちんと任せている」ということを客観的に示すため、上記の書類を積極的に提供してあげてください。貴社の協力が、従業員の大きな安心につながります。

 

4. 申請から新しい在留カード受領までの流れ

書類がすべて揃ったら、いよいよ申請です。ゴールまでの流れを追いましょう。

ステップ1:書類の最終確認

すべての書類に記入漏れや間違いがないか、有効期限は切れていないかを最終チェックします。

ステップ2:入管で申請

準備した書類一式と、パスポート・在留カードの原本を持って、管轄の入管に行きます。パスポートと在留カードは提示するのみで、提出はしません。窓口で書類が受理されると、在留カードの裏に申請中スタンプが押されて、申請受付票を受け取ります。

ステップ3:審査期間(通常2週間~1ヶ月)

入管で審査が行われます。審査期間は、申請時期や個別の状況によって変わります。繁忙期(3月~4月)は長くなる傾向があります。

この期間中、入管から追加の書類提出を求められたり、会社に電話で仕事内容の確認連絡が入ったりすることがあります。

ステップ4:結果の通知

審査が終わると、入管からあなたの自宅に通知書が簡易書留で郵送されます。この通知書に、審査結果が書かれています。

ステップ5:新しい在留カードの受領

許可の通知書が届いたら、指定された期間内に、再度入管へ行きます。

持ち物: ①届いた通知書、②申請受付票、③パスポート、④現在の在留カード、⑤手数料6,000円分の収入印紙

収入印紙は、郵便局や入管内のコンビニなどで購入できます。窓口で収入印紙を貼った手数料納付書を提出すると、その場で新しい在留カードが交付されます。おめでとうございます!

 

5. よくある質問

最後に、更新手続きでよくある疑問やトラブルへの対処法をまとめました。

Q. 転職したばかりでも更新できますか?

A. できます。ただし、前述の通り、審査はより慎重になります。新しい仕事内容がビザの範囲内であること、そして新しい会社の安定性をきちんと証明することが重要です。

Q. 給料が下がってしまったのですが、更新に影響しますか?

A. 会社の業績不振など、合理的な理由があれば直ちに不許可になるわけではありません。しかし、理由なく大幅に給与が下がっている場合や、最低賃金を下回るような場合は、安定した生活が困難と見なされ、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。

Q. もし不許可になってしまったら?

A. まずは落ち着いて、入管の窓口へ行き、不許可になった理由を必ず確認してください。理由によっては、問題点を修正し、資料を追加して再申請することで許可される可能性もあります。不許可理由が複雑な場合は、速やかに行政書士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

 

6. まとめ

ビザの更新は、あなたのこれまでの日本での生活と仕事ぶりが評価される機会です。法律やルールをきちんと守り、社会人としての義務(特に納税)を真面目に果たしていれば、何も恐れることはありません。

そして、人事担当者の皆様。外国人従業員にとって、ビザの手続きは大きな不安を伴うものです。カテゴリーに応じた正確な情報提供や、専門的な書類作成への協力が、彼らの不安を和らげ、会社への信頼とエンゲージメントを高めることに直結します。ぜひ、この記事を参考に、従業員に寄り添ったサポートをお願いいたします。

早めの準備が、確実な結果につながります。このマニュアルが、あなたのビザ更新手続きを成功に導く一助となることを心から願っています。

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