「シリコンバレーの現役大学生を呼びたい」「アジアの成長著しい大学のトップ層に自社の技術を体験してほしい」。
国内では理系の人材が不足し、採用難が続いている企業も多いのではないでしょうか。そんな中、海外の学生に目を向ける企業も増えてきています。海外の優秀な学生を採用したい。ぜひわが社の技術力を見てもらいたい。職場環境を見てもらいたい。自社で働くことの魅力を知ってもらう方法のひとつとして、海外の学生を対象にしたインターンシップをお考えの企業も多いのではないでしょうか。
ただし、国内にいる留学生とは違って、海外から学生を呼ぶ場合は、まず「日本に来るためのチケット(在留資格)」を企業が主導して手配する必要があります。出入国在留管理庁の資料には、報酬の有無や期間によって、驚くほど細かくルートが分かれていますので、どれにあてはまるのか悩まれるかと思います。
そこで、この記事では、国内の企業が、海外の大学生・卒業生をインターンシップ生として日本へ呼び寄せるための方法について、パターン分けをしてくわしく解説していきたいと思います。
目次
1. 海外呼び寄せを分ける「最大の分岐点」はここ!
海外から学生を呼ぶ際、まず最初に決めるべきは「給料(報酬)を払うかどうか」です。これにより、目指すべき在留資格の難易度と種類が大きく変わってきます。
| 在留資格 | 報酬 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特定活動(告示9号) インターンシップ |
あり | 単位が必要。半年~1年の長期も可 |
| 特定活動(告示12号) サマージョブ |
あり | 単位不要。夏休み限定の3カ月以内 |
| 短期滞在 | なし | 90日以内。見学や体験がメイン |
| 文化活動 | なし | 90日超。じっくり「学び」を提供 |
| 特定活動(告示33号) | あり/なし | トップ大卒業後1年以内。最長2年 |
2. 給料を払って「戦力」として招く
「優秀な学生にはしっかり対価を払い、責任あるプロジェクトを任せてみたい」。そんな熱意ある企業が選ぶべきは、「特定活動」というビザのグループです。
2-1. 特定活動(告示9号):大学の単位を武器にする
海外の大学と提携し、教育課程の一環として受け入れる最も「正統派」なルートです。
・条件: インターンシップが大学の単位の取得になる、または教育課程の一部であること。
・期間: 1年を超えない範囲(かつ修業年限の2分の1以内)。
例えばこんな場合
ドイツの工科大学に通うハンスさん。大学の「海外実務研修(単位付与)」という制度を使い、日本の自動車部品メーカーで半年間、月20万円の報酬を得て、新型エンジンの設計補助を行う。
2-2. 特定活動(告示12号):サマージョブ
「単位認定の手続きは面倒だけど、夏休みだけ呼びたい」という企業にとっての救世主がこのルートです。
・条件: 大学の夏季休暇等の期間中(3ヶ月以内)であること。単位認定は不要。
・期間: 3ヶ月以内。
例えばこんな場合
アメリカの大学生ジェシカさん。3ヶ月の長い夏休みを利用して、日本のITスタートアップで月25万円の報酬を得て、マーケティング戦略の立案に携わる。告示9号にくらべると提出する書類が少なく、比較的簡単に申請できます。
3. 「学び」をメインに手軽に招く
「まずはお互いの相性を確かめたい」「お給料を払うほどの手続きコストはかけられない」という場合は、無報酬での受け入れが現実的です。
3-1. 短期滞在(90日以内):ビザ免除国なら最強
最も手軽なルートです。報酬を一切払わない(実費精算のみ)のであれば、観光客と同じ枠組みで受け入れられます。
・条件: 報酬なし。90日以内。
例えばこんな場合
台湾の大学生リンさん。2週間の春休みを利用して、日本のデザイン事務所で無報酬のワークショップに参加。ビザ免除国なので、リンさんはパスポート一つで来日し、翌日からインターンを開始。
3-2. 文化活動(90日超):じっくり技術を授ける
報酬は出せないが、3ヶ月を超える長期で日本の技術や文化を学ばせたい場合に適しています。
条件: 報酬なし。日本での生活費を学生自身が持っていることの証明(預金残高など)が必要。
例えばこんな場合
フランスで日本料理を学ぶポールさん。半年間、京都の老舗料亭で無報酬の修行体験をする。報酬がないため、ポールさんの親が滞在費を仕送りすることを証明してビザを取得。
4. 世界トップ大学の「卒業生」を呼ぶ裏ワザ
実は「現役の学生」でなくても、インターンとして呼べる特別な枠組みがあります。これが「特定活動(告示33号)」、通称J-Find(未来創造人材)に関連する制度です。
・対象: 世界大学ランキング上位100位以内の大学を、卒業して1年以内の人。
・期間: 最長2年間。
・報酬: あり・なし、どちらでも可。
例えばこんな場合
シンガポール国立大学を卒業したばかりのチャンさん。日本の金融系企業で「就職活動を兼ねたインターン」として1年間フルタイムで勤務。卒業生なので学業を気にする必要がなく、そのまま正社員への切り替えも非常にスムーズ。
★J-Findについては、こちらの記事もあわせてご参照ください。
世界のエリート大卒が起業するならJ-Find(未来創造人材制度)が使える
5. 海外呼び寄せの最大の壁「在留資格認定証明書」
海外から学生を呼ぶ(無報酬の短期滞在を除く)場合、避けて通れないのが「在留資格認定証明書(COE)」の申請です。
申請から来日までのタイムスケジュール
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準備(来日の3〜4ヶ月前): 学生と合意し、雇用契約書や大学の証明書を揃える。
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入管へ申請: 日本の企業担当者が、管轄の出入国在留管理局へ書類を提出。
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審査(1〜2ヶ月): 入管が「この企業は怪しくないか」「学生の身分は確かか」を審査。
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COE発行: 許可されると、企業に紙(またはメール)の証明書が届く。
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現地ビザ発給: 企業がCOEを学生に送り、学生が自国の日本大使館でビザをもらう。
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来日!: ここまでで、最短でも2ヶ月、通常は3ヶ月程度かかります。
実務のアドバイス
「来週から来て!」は不可能です。海外インターンは「半年後のプロジェクトに向けて今動く」という時間軸でのマネジメントが求められます。
6. 実務でよくある「これって報酬?」のQ&A
「無報酬で呼びたいけれど、飛行機代を出してあげるのはダメなの?」
この質問が実務で最も多く寄せられます。改めて境界線を整理しましょう。
| 項目 | 報酬とみなされる(特定活動ビザが必要) | 報酬とみなされない(短期滞在でOK) |
|---|---|---|
| 航空券 | 現金で「渡航費」を振り込む | 会社がチケットを直接購入し、現物を渡す |
| 滞在費 | 毎日3,000円の「生活補助」を渡す | 会社がマンスリーマンションの家賃を直接払う |
| お礼 | 最終日に「感謝金」として10万円渡す | 数千円程度の日本の伝統工芸品をプレゼントする |
迷った時の合言葉
「学生のポケットが膨らむか、それともマイナスを埋めるだけか」。
学生の銀行口座に現金が残るような渡し方は、たとえ「善意の手当」であっても入管法上は「報酬」です。無報酬ルートで行くなら、「会社が直接サービスを買い、学生に提供する」のが鉄則です。
7. 海外インターンを「成功」させるための3つの準備
法的ルールをクリアしても、環境が整っていなければ学生は不安になります。
① 宿泊場所の確保
海外学生は日本で賃貸を借りられません。
・社員寮があればベスト。
・なければ、家具付きのマンスリーマンションを会社名義で契約しましょう。このコストを会社が持つことは「報酬」になりませんので、無報酬インターンでも実施可能です。
② 24時間サポートは不要、でも「窓口」は一つに
「病気になったらどうしよう」「ゴミの出し方がわからない」。
そんな時のために、専用のチャットグループ(SlackやWhatsAppなど)を作り、メンターが即レスできる体制を作っておくだけで、学生の安心感は段違いです。
③ インターンシップ保険への加入
海外から呼ぶ場合、日本の労災保険だけではカバーしきれないケース(休日中の事故や家財の破損など)があります。
・有償なら労災保険。
・無償なら、学生本人に海外旅行保険への加入を義務付けるか、企業がインターン専用保険を負担しましょう。
8. まとめ
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夏休み限定でサクッと呼びたいなら → 告示12号(サマージョブ)
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とにかく手軽に見学させたいなら → 短期滞在(無報酬)
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優秀なトップ層をじっくり口説きたいなら → 卒業生ルート(告示33号)
自社の受け入れ体制にあったインターンシップを計画し、そのためには、どの在留資格が必要なのか。このガイドを参考に検討してみてください。
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★留学生をインターンシップに受け入れる場合については、こちらの記事もあわせてご参照ください。
【解説】留学生をインターンシップに受け入れるとき何に注意をしたらいい?
★また、外国人を雇用するときは、こちらのマニュアルもご参照ください。
【採用担当】外国人の技術・人文知識・国際業務ビザ取得完全マニュアル



