高度専門職ビザを取得するメリットとは

「自身の専門スキルを活かし、日本で安定したキャリアを築きたい」

「将来的に家族と共に、日本に長く住み続けることを考えている」

近年、日本でのキャリア形成を目指す優秀な外国人材の方が増えていますが、それに伴い、在留資格に関するこのようなご相談をいただく機会も多くなったように思います。

この記事では、特に高い専門性を持つ皆さんに向けて、「高度専門職ビザ」の基礎知識と、このビザを取得するメリットについて解説していきます。「高度専門職ビザ」は、日本での中長期的なキャリアプランを考える上で、重要な選択肢の一つとなりますので、ぜひお読みください。

そもそも「高度専門職ビザ」とは?

まず、「高度専門職ビザ」がどのような在留資格なのかをご説明したいと思います。

このビザは、日本の学術研究や経済の発展に貢献するであろう、優れた能力を持つ外国人材を受け入れるために創設されたビザで、このビザを取得した人には、さまざまな優遇措置が与えられています。政府が定めた基準で、「高度な人材」であると認められる場合、他の在留資格にはない特別なメリットを与える、という仕組みになっているのです。

活動内容による3つの分類「イ・ロ・ハ」

高度専門職の在留資格は、その活動内容によって「高度専門職1号」と「高度専門職2号」に分かれています。初めて高度専門職ビザの取得する場合は、まず「高度専門職1号」を目指すことになります。高度専門職1号は、活動内容によって、さらに以下の3つの種類に分類されます。ご自身の活動内容が、このいずれかに該当することが必要になります。

高度専門職1号(イ):高度学術研究活動

大学教授や政府機関の研究員など、研究や教育に従事する活動です。

高度専門職1号(ロ):高度専門・技術活動

自然科学や人文科学の知識を活かし、日本の企業などで働く活動です。ITエンジニア、開発者、マーケティング担当者など、多くの技術者やホワイトカラー職がこの分類に該当します。

高度専門職1号(ハ):高度経営・管理活動

企業の経営者や管理者として、事業の経営や管理に従事する活動です。

 

「ポイント制」による客観的な評価

次に、ご自身の能力が「高度」であると証明するために用いられるのが、「高度人材ポイント制」という評価システムです。学歴、職務経歴、年収、年齢、研究実績といった要素を点数に換算し、その合計ポイントで評価が行われます。

 

ポイント計算の前提条件

重要な点として、ポイント計算の対象となるためには、原則として年収が300万円以上であることが必要です。この基準を満たした上で、ポイントの合計が70点以上に達している場合に、「高度専門職」としてこの在留資格を申請することが可能になります。

主なポイント項目には、以下のようなものがあります。

・学歴: 博士号(30点)、修士号(20点)

・職務経歴: 10年以上の実務経験(20点)

・年収: 1,000万円以上で40点など、金額に応じて点数が加算

・資格: 日本の国家資格(5点)、IT分野の特定の試験合格など

・特別加算: 日本の大学を卒業(10点)、日本語能力試験N1(15点)

これらのポイントは、先ほどの「イ・ロ・ハ」の分類によって、一部計算方法や対象項目が異なります。

 

具体的なポイント計算の事例

それでは、実際にどのような方が70点の基準をクリアできるのか、事例を3つご紹介します。

【事例1】若手ITエンジニア Aさん(32歳)

ポイント
学歴 海外の大学で修士号を取得 20点
職歴 実務経験7年 15点
年齢 30歳~34歳 10点
年収 550万円 15点
特別加算 日本語能力試験N1に合格 15点
合計 75

判断: Aさんは合計75点となり、高度専門職の基準を満たします。この場合、3年間日本で活動を継続することで、永住許可申請の要件を満たすことになります。

【事例2】ミドルキャリアのAI研究者 Bさん(38歳)

ポイント
学歴 海外の大学で博士号を取得 30点
職歴 実務経験10年以上 20点
年齢 35歳~39歳 5点
年収 850万円 30点
研究実績 国際的な論文データベースに論文3本掲載 15点
合計 100

判断: Bさんは合計100点となり、80点以上の基準も満たします。そのため、来日からわずか1年間で永住許可申請への道が開かれます。

【事例3】スタートアップ企業のCEO Cさん(28歳)

ポイント
学歴 日本の大学を卒業(学士) 10点
職歴 実務経験5年 10点
年齢 29歳以下 15点
地位 代表取締役 10点
年収 700万円 25点
特別加算 日本の大学を卒業 10点
合計 80

判断: Cさんは合計80点となり、基準をクリアします。若さや日本での学歴、そして高い年収が評価されたかたちです。彼も3年間の活動で永住許可申請が可能になります。

 

高度専門職ビザを取得するメリット

高度専門職ビザには多くのメリットがありますが、皆さんのキャリアプランに大きく関わる、特に重要な2つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

5年の在留期間によるキャリアの安定

多くの外国人エンジニアが取得する「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、初回の在留期間が「1年」や「3年」となることが一般的です。

一方、高度専門職ビザは、一律で法律上の最長期間である「5年」の在留期間が付与されます。これにより、在留資格の更新に関する心配をすることなく、長期的な視点を持って仕事に集中したり、生活設計を立てることが可能になります。

永住権取得までの期間が大幅に短縮

「将来的には日本に永住したい」とお考えの方にとって、これは最大のメリットと言えるかもしれません。通常、永住権を申請するためには、原則として「継続して10年以上」日本に在留していることが必要です。

しかし、高度専門職ビザは、この「10年」という期間を大幅に短縮する、特例ルートが設けられています。

 ・ポイント計算が70点台の方

継続して3年間、高度専門職として活動していれば永住許可申請が可能になります。

・ポイント計算が80点以上の方

継続して1年間、高度専門職として活動していれば永住許可申請が可能になります。

 

その他にも大きなメリットが

上記の2つのメリット以外にも、高度専門職ビザには、皆さんの日本での活動を支えるための様々な優遇措置があります。

・複合的な活動の許容

例えば、ITエンジニア(ロ)として働きながら、関連するIT会社を経営する(ハ)など、複数の在留資格にまたがるような活動が可能です。

・配偶者の就労

一定の要件のもと、配偶者が学歴や職歴の要件を満たさなくても、フルタイムで就労することが可能です。

・親の帯同

7歳未満の子の養育等の目的で、世帯年収が800万円以上などの条件を満たした場合に、ご自身の親または配偶者の親の帯同が認められる場合があります。 

・家事使用人の帯同

世帯年収1,000万円以上などの条件を満たした場合に、外国から家事使用人を呼び寄せることができます。

・入管手続きの優先処理

出入国在留管理局での申請が優先的に審査されるため、手続きにかかる時間が短縮される傾向にあります。

 

ステップアップとしての「高度専門職2号」

「高度専門職1号」の在留資格で3年以上活動を継続すると、さらに安定性の高い「高度専門職2号」への変更申請が可能になります。「高度専門職2号」の最大のメリットは以下の2点です。

在留期間が無期限になる

更新手続きが不要となり、永住権とほぼ同様の安定した身分が得られます。

活動範囲の拡大

1号で認められた活動に加え、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができるようになります。これにより、キャリアチェンジにも柔軟に対応できます。

 

注意すべき点

多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。

特に注意が必要なのは「転職」する場合です。高度専門職1号の在留資格は、特定の会社(所属機関)での活動を前提に許可されています。そのため、転職する際には、事前に「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。

転職後の会社での年収や職務内容でポイントが70点に満たなくなった場合、高度専門職ビザを維持できず、他の在留資格(例:「技術・人文知識・国際業務」)への変更が必要になる可能性があります。

 

まとめ

ここまで見てきましたように、高度専門職ビザは、日本でのキャリアを中長期的に考えている皆さんにとって、非常に多くのメリットを持つ在留資格です。

もちろん、ご自身の経歴がポイント基準を満たすことを証明するための書類準備や申請手続きは、決して簡単なものではありませんが、検討する価値のある在留資格だといえるのではないでしょうか。

「自分の経歴でポイントが何点になるか、正確に知りたい」

「申請手続きを確実に行い、スムーズに在留資格を取得したい」

在留資格の審査は、提出書類に基づいて行われるため、精度の高い書類を作成することが何よりも重要です。もし手続きにご不安な点があれば、私たち申請取次行政書士は、こうした手続きの専門家ですので、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

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