日本語学校と専門学校はここが違う!外国人材採用のポイント

グローバル人材の採用が活発化する中、「日本語学校で熱心に学んだ優秀な外国人を、ぜひ正社員として採用したい」というご相談をいただく機会が増えています。その一方で、「専門学校の卒業生と同じように考えて、申請したら不許可になってしまった」という痛ましいケースも後を絶ちません。

なぜ、このような違いが生まれるのでしょうか? 結論から申し上げますと、出入国在留管理庁(入管)の審査において、「専門学校の卒業」と「日本語学校の卒業」は、全く異なる教育歴として扱われるからです。この違いを正確に理解することが、採用活動の成功と失敗を分ける重要な鍵となります。

この記事では、両者の法的な位置づけの違いを明確にし、日本語学校の卒業生を採用して就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を取得するための、具体的な条件と採用実務のポイントを解説いたします。

 

1. 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)と「学歴要件」

まず、全ての前提となるルールを確認しておきましょう。
一般的に、外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するためには、以下の学歴要件を満たす必要があります。

・大学を卒業し、「学士」以上の学位を有していること。

・日本の短期大学を卒業し、「短期大学士」の学位を有していること。

・日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」の称号を付与されていること。

(例外)従事しようとする業務について、10年以上の実務経験を有していること。

これらの学歴要件は、「これから行う専門的な仕事の基礎となる知識を、高等教育機関で修得していること」を証明するために求められます。このリストに「日本語学校の卒業」が含まれていない点が、重要なポイントです。

 

2. 「専門学校卒」が有利な理由 ―「専門士」という公的な称号の力

では、なぜ専門学校の卒業生は、大卒者とほぼ同等に扱われるのでしょうか。それは、彼らが「専門士」という公的な称号を手にしているからです。

「専門士」とは?

「専門士」は、日本の文部科学大臣が認定した専修学校の専門課程のうち、以下の要件を満たす課程を修了した者に与えられる、信頼性の高い称号です。

・修業年限が2年以上であること。

・総授業時数が1,700時間以上であること。

・試験などによる成績評価を行い、その評価に基づいて課程修了の認定を行っていること。

入管は、この「専門士」の称号を「大学卒業と同等の専門性を有する証明」と見なします。 そのため、専門学校で学んだ内容と、就職先での仕事内容に明確な関連性があれば、学歴要件をクリアしたと判断され、ビザが許可される可能性が非常に高くなります。

 

<ビザが許可されやすい例>

・2年制のIT系専門学校でプログラミングを学び「専門士」を取得 → IT企業でプログラマーとして就職。

・2年制の観光系専門学校でホスピタリティを学び「専門士」を取得 → ホテルでフロント業務・予約管理担当として就職。

・2年制の国際ビジネス系専門学校で貿易実務を学び「専門士」を取得 → 商社で貿易事務として就職。

このように、専門学校卒業生の採用においては、「専門士の称号を取得しているか」そして「専門課程で学んだ内容と職務内容が一致しているか」の2点が、採用可否を判断する基準となります。

 

3. 「日本語学校卒」は、なぜ学歴として認められないのか

一方で、日本語学校の卒業は、残念ながら上記の学歴要件を満たすものとは見なされません。

法的な位置づけの違い

入管法および関連法令において、日本語学校は「各種学校」に分類されます。これは、大学や専修学校(専門学校)といった学校とは異なり、主に大学などへの進学するための準備教育を行う機関と位置づけられています。

つまり、入管の審査官から見れば、日本語学校は「専門知識を学ぶ場所」ではなく、「日本語という言語スキルを学ぶための準備校」という認識なのです。

そのため、日本国内での最終学歴が「日本語学校卒業」だけでは、学歴要件を満たさないという結論になります。たとえ2年間、毎日真面目に日本語を学び、N1を取得したとしても、それだけを理由に「技術・人文知識・国際業務」ビザが許可されることは、原則としてありません。

 

4. なぜ日本語学校の卒業生は採用できないのか?― 採用を実現する3つの道筋

「それなら、日本語学校の卒業生は採用できないのか」と落胆されるかもしれません。ご安心ください。道はあります。
ただし、審査の土台となる「学歴」の考え方を切り替える必要があります。
日本語学校卒業生を採用する場合、審査の根拠を「日本での学歴」ではなく、「本国での学歴または職歴」に求めることになります。

道筋①:本国の「大学卒業」を学歴要件とする(最も一般的なケース)

これが、日本語学校卒業生を採用するための最も現実的な方法です。

<審査の考え方>
申請者の学歴は「日本語学校卒業」ではなく、「〇〇国(本国)の△△大学□□学部卒業」として審査されます。日本語学校での学習履歴は、あくまで「高い日本語能力」や「日本文化への適応性」をアピールするための、非常に有利な補足材料として評価されます。

 

<採用のポイント>
本国の大学の専攻と、日本での仕事内容の関連性を証明する。 (例:本国の大学で経営学を専攻 → 日本の会社でマーケティング職として採用)

面接時に、必ず本国での最終学歴と専攻を確認する。「どの日本語学校を卒業しましたか?」という質問以上に、「本国ではどの大学で何を学びましたか?」という質問が、ビザ申請の観点からはとても重要です。

本国の大学の卒業証明書を必ず提出してもらう。 これが学歴要件を証明する最重要書類となります。

 

道筋②:「国際業務」分野での専門性をアピールする

翻訳・通訳、語学指導、海外取引業務といった「国際業務」分野の仕事であれば、日本語学校で培った高度な日本語能力が、職務との関連性を補強する材料になり得ます。

<審査の考え方>
この場合でも、多くは本国の大学での関連専攻(例:文学、言語学、国際関係学など)が基礎となります。日本語能力が職務に不可欠であることを、採用理由書などで説得力をもって説明することが重要です。

なお、「国際業務」には、「従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験」という要件もあります。もし本国での大学が全く関係ない分野でも、翻訳者として3年以上の職歴があれば、それを基に申請できる可能性があります。ただし、新卒に近い人材の場合は、やはり本国の大学での学歴が基本となります。

 

道筋③:10年以上の実務経験を証明する(例外的なケース)

もし採用したい人材が、日本語学校に来る前に、母国で10年以上にわたり専門的な職務(例:ITエンジニア、設計、経理など)に従事していた場合、学歴を問わず、その職歴を以て申請が可能です。

<審査の考え方>
学歴ではなく、長年の職歴によって専門性を証明します。この場合、10年以上の実務経験を、前職の会社などが発行した「在籍証明書」で客観的に証明する必要があります。

 

5. 採用候補者への質問と確認事項

以上の点を踏まえ、採用面接や内定後の手続きで、それぞれの候補者に確認すべきポイントをまとめておきます。

専門学校の卒業生(または卒業見込み者)への確認事項

 

「卒業時に『専門士』の称号は授与されますか?」

→ これがYESであれば、大卒と同等の学歴要件を満たします。

 

「何を専攻していましたか?当社の仕事内容と学校での学びはどう繋がりますか?」

→ 職務との関連性を本人の口から説明してもらうことが重要です。

 

<依頼する書類>
卒業(見込)証明書、成績証明書

 

日本語学校の卒業生(または卒業見込み者)への確認事項

 

「日本に来る前の、最終学歴を教えてください。大学名と学部、専攻は何でしたか?」

→ この質問が最も重要です。ビザ申請の土台となる情報を確認します。

 

「その大学での学びを、当社の仕事でどのように活かせると思いますか?」

→ 本国での学歴と、日本での職務の関連性を確認します。

 

<依頼する書類>
本国の大学の卒業証明書、日本語学校の卒業(見込み)証明書、成績証明書、日本語能力試験(JLPT)の合格証明書

 

6. おわりに

外国人材の採用において、「日本語が堪能であること」は非常に大きな魅力です。その点で、日本語学校の卒業生は極めて優秀な候補者と言えるでしょう。

しかし、ビザ申請という行政手続きにおいては、その日本語能力が直ちに専門性とは見なされない、という事実があります。 採用担当者の皆様には、日本語学校卒業生の場合は「本国の学歴」を、専門学校卒業生の場合は「専門士という称号と専門分野」を、それぞれ審査の土台として捉え、採用戦略を立てていただくことが成功への最短距離となります。

個別のケースで判断に迷われる場合や、申請書類の作成に不安がある場合は、ぜひ一度、私たちのような専門家にご相談ください。貴社の採用活動が円滑に進むよう、的確なアドバイスでお手伝いさせていただきます。

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