日本で就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)を取得し、日々キャリアを築き、生活の基盤を固めてこられた外国人の方にとって、「永住権(永住許可)」の取得は、日本での生活を安定させるための大きな目標の一つではないでしょうか。
在留期間の更新手続きという数年ごとのプレッシャーから解放され、職業選択の自由度が格段に上がり、住宅ローンをはじめとする社会的信用も向上するなど、永住権がもたらすメリットは計り知れません。
しかし、その一方で、永住許可申請はすべての在留資格申請の中でも特に審査が厳格で、求められる要件も複雑です。
「自分はいつ申請できるのだろう?」 「納税や年金で失敗したくない」 「どんな書類を、どうやって集めればいいのかわからない」 「審査中に転職しても大丈夫?」など、疑問は尽きません。
この記事は、まさにそうした疑問や不安を抱える、日本で働く外国人(就労ビザ所持者)の皆様のために、永住許可の基本的な3要件から、就労ビザ所持者にとって最大の関門である「国益要件(在留年数、納税、年金など)」の徹底的な解説、膨大な必要書類の具体的な集め方、申請手続きの全ステップ、そして多くの人がつまずく「落とし穴」と「注意点」まで、詳細に解説いたします。
このガイドが、あなたの日本での未来設計図を描くための一助となれば幸いです。
目次
1. 永住許可とは? 「3つの基本要件」
永住許可の審査は、出入国在留管理庁(入管)が公表している「永住許可に関するガイドライン」に基づいて行われます。
永住許可を得るためには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
1. 素行が善良であること(素行要件)
法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
簡単に言えば、「日本の法律やルールを守って、真面目に生活しているか」ということです。
具体的には、懲役、禁錮、罰金刑(交通違反の罰金も含む)を受けていないこと。少年法による保護処分が継続中でないこと、などです。
気を付けなければいけないことは、「大きな犯罪歴はない」というだけでは不十分だということです。
<交通違反>
スピード違反や駐車違反など、軽微な違反(反則金)であっても、繰り返し行っている場合は「ルールを守れない人」と判断され、不許可の原因となります。
<入管法違反>
在留カードの常時携帯義務、引っ越し時の住居地届出(14日以内)、所属機関(会社)の変更届出などを怠っていないかも見られます。
2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
公共の負担にならず、その有する資産や技能等から見て、将来にわたり安定した生活が見込まれること。
簡単に言えば、「他人の助けや国の生活保護などに頼らず、自分(と家族)の力で生活していけるか」ということです。
具体的には、安定した収入(職)があることです。
<世帯単位での審査>
申請者本人の収入が基準(目安は年収300万円以上)に達していなくても、配偶者の収入と合算して世帯全体で安定した生活ができると判断されれば、要件を満たす可能性があります。
<扶養家族の数>
逆に、扶養している家族(本国の親族も含む)が多い場合は、それに見合った高い収入が求められます。
<安定性の重視>
「直近1年だけ収入が高い」のではなく、「将来にわたって安定した収入が見込めること」が重要です。このため、審査では過去数年分の収入がチェックされます。
3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
その者の永住が、日本国の利益になるかどうかを判断されます。
これが、就労ビザで働く方にとって最も重要かつ複雑な要件です。この「国益要件」を満たすためには、さらに以下の細かいサブ要件をすべてクリアする必要があります。
2. 素行要件と独立生計要件の深掘り
さきほど触れた「素行要件」と「独立生計要件」について、就労ビザ所持者が注意すべき点をさらに詳しく見ていきましょう。
1. 素行要件(法律違反)で注意すべき点
「犯罪歴はない」という方でも、以下の点でつまずくことがあります。
交通違反
永住申請において非常に重視されます。
明確な基準は非公開ですが、一般的に「過去5年間で5回以内、かつ過去2年間で1~2回以内」程度が許容範囲と言われています。
スピード違反、一時停止違反、駐車違反など、軽微な違反(反則金)であっても、回数が多ければ「交通ルールを守れない人」と判断されます。
飲酒運転や大幅なスピードオーバーなど、悪質な違反(罰金刑以上)は、1回でもあれば一定期間(罰金を納付してから5年など)は申請が極めて困難になります。
入管法違反
留学時代に資格外活動(アルバイト)の時間をオーバーしていた(週28時間を超えていた)過去がある場合。
在留カードの更新忘れ、引っ越し後の届出(14日以内)忘れなど。これらも軽微な違反ですが、繰り返していると不利になります。
2. 独立生計要件(収入)で注意すべき点
「いくらあれば安心」という明確な基準はありませんが、一般的な目安と注意点があります。
年収の目安
あくまで目安ですが、年収300万円以上が一つのラインとされています。
これは申請者一人の場合です。扶養家族(配偶者や子供)がいる場合は、その人数に応じて必要な年収額は上がります。
目安としては、扶養1名で350万~380万、扶養2名で400万~450万程度。
収入の安定性
直近5年分(特例なら3年または1年分)の収入が審査されます。
「今年だけ年収が高い」のではなく、「継続して安定した収入があること」が重要です。
申請直前の転職で年収が大幅に下がった場合などは、安定性がないと判断されるリスクがあります。
扶養家族の管理
税金対策(扶養控除)のために、海外に住む親族を多数扶養に入れているケースがあります。
これが実態(本当に仕送りをしているか)と異なったり、扶養人数に対して国内での収入が見合わないと判断されたりすると、独立生計要件や納税の適正さ(過度な節税)を疑われる可能性があります。
3. 最大の関門「国益要件」
国益要件は、あなたが「長期にわたり日本社会に定着し、貢献しているか」「国民としての義務を果たしているか」を判断する基準です。永住権を取るうえでいちばんの関門と言えるかもしれませんので、もう少しくわしく見ていきましょう。
1. 原則「10年」の在留要件
まず、原則として「引き続き10年以上」日本に在留していることが必要です。
「引き続き」の意味
これが非常に重要です。在留資格が途切れることなく、継続して在留している必要があります。例えば、就労ビザで5年滞在し、一度ビザを切らして帰国し、再度新しいビザで入国して5年滞在した場合、合計は10年ですが「引き続き」とはみなされません。
また、在留資格が途切れていなくても、長期の出国には注意が必要です。年間の出国日数が合計で180日(約半年)を超えたり、1回の出国が90日(約3ヶ月)を超えたりすると、在留の継続性が途切れた(リセットされた)と判断されるリスクが高くなります。仕事の長期出張などがある方は特に注意が必要です。
10年の内訳(就労資格の要件)
上記10年のうち、「就労資格(『技術・人文知識・国際業務』など)又は居住資格(『日本人の配偶者等』など)をもって引き続き5年以上在留していること」が求められます。
<OK例> 留学ビザで5年 + 就労ビザで5年 = 合計在留10年(うち就労5年)
<NG例> 留学ビザで8年 + 就労ビザで2年 = 合計在留10年(就労が5年未満)
<OK例> 就労ビザで3年 + 留学ビザで2年 + 就労ビザで5年 = 合計在留10年(後半の就労が5年継続している)
2. 在留期間「10年」の特例(早く申請できるケース)
「10年も待てない」という方も多いでしょう。就労ビザで働く方の場合、この10年要件が大幅に短縮される特例があります。それが「高度専門職ポイント(HSP)」の活用です。
現在「高度専門職」の在留資格を持っていなくても、ご自身の学歴、職歴、年収、資格などをポイントに換算し、基準点に達していれば特例が適用されます。
ポイントが80点以上ある方
申請時から遡って1年前の時点でも80点以上あり、かつ現在も80点以上ある場合。
在留歴1年で永住申請が可能です。
ポイントが70点以上ある方
申請時から遡って3年前の時点でも70点以上あり、かつ現在も70点以上ある場合。
在留歴3年で永住申請が可能です。
(例) Aさんは4年前に日本の大学院(修士)を卒業し、IT企業に就職。 3年前(就職1年後)、Aさんの年収・学歴・年齢などでポイント計算したところ「75点」あった。 そして現在、申請時のポイントも「75点」以上ある。 → Aさんは在留歴10年を待たずに、在留歴「3年」(正確には3年間70点以上を維持)で永住申請が可能です。
※ポイント計算は非常に複雑です。出入国在留管理庁のウェブサイトにある「ポイント計算表」を参照し、ご自身の疎明資料(卒業証明書、年収証明書、日本語能力試験の合格証など)と照らし合わせて確認する必要があります。
高度専門職ビザについては、よろしければこちらの記事もご参照ください。
→高度専門職ビザを取得するメリットとは(https://kiyoshiyokokawa-office.com/koudo-senmonshoku-merit/)
3. 納税・公的義務の履行(近年最も厳格化)
永住申請が不許可になる最大の理由が、この「納税」と「公的義務(年金・医療保険)」の未納・遅延です。
納税の義務(住民税・国税)
「税金をきちんと、納期通りに払っているか」が、過去にさかのぼって厳しく審査されます。
<対象となる税金>
・住民税(都道府県民税・市区町村民税)
・国税(会社員の場合は「源泉所得税及び復興特別所得税」、個人事業主や経営者の場合は「申告所得税及び復興特別所得税」「消費税及び地方消費税」など)
<審査される期間>
原則(10年要件)の場合:直近5年分
高度専門職ポイント(HSP)70点以上の場合:直近3年分
高度専門職ポイント(HSP)80点以上の場合:直近1年分
<重要なポイント>
「適正な時期に納付」
「全額納付」しているのは当然だとして、審査の核心は「納期限までに払っているか」です。たった1日でも、納期限を過ぎてから支払った(遅延納付した)場合、それが理由で不許可になる可能性が高くなります。
会社員(特別徴収)の場合は、住民税や所得税は給与から天引き(特別徴収)されているため、個人での納付遅れは発生しにくいですが、途中で 転職している場合、前の会社を辞めてから次の会社に入社するまでに期間が空くと、その間の住民税が「普通徴収(自分で納付)」に切り替わることがあります。この納付書を見逃して遅延するケースが多発しています。
公的年金・医療保険の義務
税金と並んで厳しく審査されるのが、年金と健康保険です。
審査される期間は直近2年間(24か月分)です。この24ヶ月分のすべての月において、適正に加入し、納期限までに納付している必要があります。
なお、高度専門職ポイント80点以上の場合は、審査期間が直近1年間となります。
<会社員(厚生年金・健康保険)の場合>
給与天引き(社会保険)のため、基本的には問題ありません。
転職している場合は、前の会社を退職した翌日から、次の会社に入社する前日までの期間(たとえ1日でも)は、「国民年金」と「国民健康保険」に加入する義務が発生します。
例:5月31日退職、6月2日入社 → 6月1日は「国民年金・国保」に加入義務あり。
この切り替え手続きを市区町村役場で行わず、「未納期間」が発生すると、それが原因で不許可となります。
<個人事業主・フリーランス(国民年金・国民健康保険)の場合>
直近24か月分の保険料を、1か月分も漏らさず、納期限までに支払っていることが絶対条件です。口座振替の残高不足による遅延も「遅延」とみなされます。
扶養家族の分も審査対象になります。配偶者などを扶養に入れている場合、その配偶者が国民年金の支払い義務者(例:20歳以上60歳未満で、扶養に入っていない期間がある等)であれば、その支払い状況も審査対象となります。
4. 現に有する在留資格の最長の期間
永住申請時には、現在持っている在留資格の期間が「最長の在留期間」であることが求められます。
就労ビザの最長期間は「5年」ですが、運用上は「3年」の在留期間を持っていれば、この要件は満たされるとされています。
「1年」の在留期間しかもらえていない場合、日本への定着性が低いとみなされ、原則として永住申請はできません。まずは在留期間更新許可申請で「3年」の許可を得ることが先決です。
4. 永住許可申請の手続き
要件を満たしていることを確認したら、いよいよ申請準備です。永住申請は「書類準備が9割」と言われるほど、集める書類が膨大かつ複雑です。
Step 1 申請時期の決定と最終セルフチェック
・在留歴(10年、3年、1年)を満たしているか?
・今のビザの期間は「3年」または「5年」か?
・税金(住民税、国税)は、過去5年(または3年、1年)分、すべて「納期通り」に払っているか?
・年金・健康保険は、過去24か月分、すべて「納期通り」に払っているか?
・交通違反は直近で多くないか?
Step 2 必要書類の収集
膨大な量があるため、リスト化して漏れなく準備します。ここでは「技術・人文知識・国際業務」等の就労ビザから(10年要件またはHSP特例で)申請する会社員の場合を例に、主要な書類を解説します。
申請者の状況(個人事業主、HSP特例利用、家族滞在の家族も同時申請など)によって必要書類は異なります。必ず最新の情報を出入国在留管理庁HPで確認してください。
全員が提出する基本書類
永住許可申請書
法務省のウェブサイトからダウンロードできます。
証明写真
規定サイズ(4cm×3cm)、6か月以内に撮影したもの。
在留カード・パスポート
申請時に窓口で原本を提示します。
理由書
「なぜ永住したいのか」「これまでの日本での生活概要(入国から現在まで)」「日本社会への貢献(仕事内容、社会活動など)」「永住後も法律を守り生活していくこと」などをA4用紙1〜3枚程度で具体的に記述します。(日本語または英語)。単なる定型文ではなく、「日本への定着性」と「善良な市民であること」をアピールする重要な書類です。
職業・収入に関する書類(会社員の場合)
在職証明書
勤務先(会社)に発行してもらいます。
住民税の「課税(非課税)証明書」
審査対象期間分(原則5年、特例では3年または1年)が必要です。
(例:2025年11月に申請する場合、2025年度、2024年度、2023年度、2022年度、2021年度の5年分)
取得場所は、市区町村役場(その年の1月1日に住んでいた場所)です。
住民税の「納税証明書」
上記と同じ期間分が必要です。
これは「いくら課税されたか」ではなく、「それをきちんと納付したか(納期通りか、未納がないか)」を証明するものです。
国税の納税証明書
会社員の場合、「源泉所得税及復興特別所得税」について「未納がないこと」を証明します。
取得場所は、住居地を管轄する税務署
預貯金通帳の写し、または不動産の登記事項証明書
申請人の資産を証明する書類になります。
公的義務に関する書類
公的年金の納付状況を証明する資料(直近2年分)
「ねんきん定期便」(全期間分)または、年金事務所で発行される「被保険者記録照会回答票」です。
国民年金に加入していた期間がある場合は、の期間の領収書の写し(すべて)など、納期内納付を証明する資料。
公的医療保険の納付状況を証明する資料(直近2年分)
会社員(健康保険)の場合は、「健康保険被保険者証」の写しです。
国民健康保険に加入していた期間がある場合は、保険料の納付証明書や領収書の写しなどが必要です。
身分・住居に関する書類
住民票「世帯全員分」かつ「マイナンバー以外の省略がないもの」(続柄、在留資格、在留カード番号などが記載されたもの)が必要です。
取得場所は、市区町村役場です。
配偶者や子供に関する資料(該当者のみ)
配偶者が日本人の場合:戸籍謄本
配偶者が外国人の場合:結婚証明書(本国発行)など
身元保証に関する書類
永住申請には「身元保証人」が1名必要です。
身元保証人になれる人
明確な定義はありませんが、一般的には、会社の雇用主や職場の上司などがなることが多いでしょう。
身元保証人の責任
法令遵守や法的義務について、入管法上で「道義的責任」を負います。
借金の連帯保証人のような法的な支払い強制力(お金を代わりに払う義務)はありません。この点を誤解している人が多いため、依頼する際は丁寧に説明しましょう。
身元保証人に用意してもらう書類
・身元保証書(入管庁HPでダウンロード。保証人の署名が必要)
・身元保証人の身分事項を明らかにする書類(運転免許証など)
高度専門職ポイントを利用する場合の追加書類
ポイント計算表
申請時、1年前、3年前の各時点のもの。
各ポイントを疎明する資料
(例)80点の場合:申請の1年前の時点での80点を証明する資料(当時の年収証明書、卒業証明書、日本語能力試験N1合格証など)と、申請時の時点での80点を証明する資料(両方)が必要です。
我が国への貢献に係る資料(ある場合)
勤務する会社からの「推薦状」があればぜひ提出しましょう。
また、表彰状、感謝状、叙勲書などがあればその写しを提出します。
その他、各分野において貢献があることに関する資料があれば提出します。
了解書
就労状況や納税状況などに変更が生じた場合には、速やかに入管に連絡しなければならないことを「了解した」旨を書面で提出することとなっています。この書類は、入管庁のホームページからダウンロードすることができます。
Step 3 申請書の提出
提出先
ご自身の住居地を管轄する「出入国在留管理局」(本局、支局、または出張所)
申請者
原則として本人。ただし、行政書士に依頼した場合は「申請取次」として代行が可能です。
Step 4 審査
標準処理期間
法務省は「4か月~6か月」と公表していますが、これはあくまで目安です。
実態
実際には6か月から長い時で1年程度かかるのが一般的です。審査期間は個々のケースや申請時期によって大きく異なります。
審査中の注意点
転職・退職
可能です。ただし、速やかに入管に「所属機関に関する届出」を行う義務があります。転職によって収入が大幅に下がる場合は、審査に影響が出る可能性があります。
引っ越し
可能です。市区町村役場での転居届と、入管への「住居地変更届」を必ず行ってください。
長期出国
審査中に長期間(例:合計180日や1回90日以上)日本を離れると、「日本への定着性がない」と判断され、審査に不利になる可能性があります。
法律違反
審査中に交通違反や何らかの犯罪を犯すと、不許可になる可能性が極めて高くなります。
Step 5 結果の通知
封書またはハガキで、結果が郵送されてきます。
許可の場合
「通知書」と、その他の必要なもの(パスポート、在留カード、手数料納付書、10,000円分の収入印紙)を持って入管に行きます。窓口で手数料(収入印紙)を支払い、「永住者」と記載された新しい在留カードが交付されます。
不許可の場合
「不許可通知書」が届きます。
入管の窓口に行けば、不許可の「理由」を口頭で教えてもらうことができます(1回のみ)。この理由確認は、再申請のために必須です。
5. 永住申請で失敗しないための注意点とQ&A
永住申請は、要件を満たしているつもりでも、思わぬ「落とし穴」にはまることがあります。よくある失敗例と対策を知っておきましょう。
Q1. 納税や年金の「遅延」は、1日でもダメですか?
A1. はい、原則として1日でも遅延があれば不許可のリスクが非常に高いです。
これが最も厳しいポイントです。入管は「お金があるかないか」よりも「国民の義務を、納期通りに果たしているか」という規範意識(コンプライアンス)を重視しています。
対策
申請することを決意したら、まずは過去の納付状況を徹底的に確認してください。もし遅延がある場合、その事実が消えるまで(例えば、直近5年分の審査対象期間からその遅延の記録が外れるまで)待ってから申請する方が賢明です。
「うっかり忘れていた」「納付書が届かなかった」は通用しません。特に、転職時の国民年金・国民健康保険への切り替え忘れは致命的です。
Q2. 会社員(特別徴収)なので税金は安心ですよね?
A2. 99%安心ですが、1%のリスクがあります。
ご自身に非はなくても、勤務先の会社が源泉所得税や住民税の納付を「滞納」していた場合、その従業員であるあなたの永住申請が不許可になるケースがあります。非常に稀ですが、もし勤務先の経営状況に不安がある場合は注意が必要です。
Q3. 軽微な交通違反(駐車違反など)が過去5年で6回あります。もう申請できませんか?
A3. 可能性は下がりますが、ゼロではありません。
5回以内はあくまで目安です。回数が多くなってしまった場合、申請時に「反省文」や「二度と違反をしない旨の誓約書」を添付することで、情状を酌量してもらえる可能性もゼロではありません。しかし、不許可のリスクは高いと覚悟すべきです。日頃から交通ルールを遵守することが最大の防御です。
Q4. 審査期間中に転職しても大丈夫ですか?
A4. 大丈夫ですが、注意が必要です。
Step 4でも触れましたが、転職自体は問題ありません。ただし、以下の点に注意してください。
収入の維持
転職によって年収が大幅にダウンした場合、「独立生計要件」の安定性を疑われる可能性があります。
届出の義務
入管への届出は法律上の義務です。これを怠ると、それ自体がマイナス評価になります。
審査の長期化
転職(所属機関の変更)があった場合、審査官が新しい勤務先や収入の安定性を再確認するため、審査期間が通常より延びる傾向があります。
Q5. 身元保証人が見つかりません。どうすればいいですか?
A5. 身元保証人の責任は、一般的に思われているほど重くありません。
「保証人」という言葉から、借金の連帯保証人をイメージしてしまい、依頼された日本人や永住者の友人が躊躇することがあります。
対策
身元保証人の責任が、あくまで「道義的責任」であり、法的な支払い義務はないことを丁寧に説明しましょう。「あなたに金銭的迷惑をかけることは絶対にない」と明確に伝えることが重要です。
それでも友人・知人に見つからない場合は、勤務先の日本人上司や、信頼できる同僚(日本人または永住者)に相談してみるのが一般的です。
Q6. 不許可になってしまいました。すぐに再申請できますか?
A6. できますが、不許可の理由を解消しなければ、何度申請しても結果は同じです。
対策
必ず入管で不許可理由を確認してください。
(例)「年金の未納期間があるため」と言われたら、その未納分を(後から払えるものであれば)支払い、さらにそこから「直近2年間の完璧な納付実績」を積み直してから再申請する必要があります。
(例)「交通違反が多いため」と言われたら、一定期間(最低1〜2年)無違反で過ごし、素行が改善されたことを証明して再申請します。
6. 永住権取得後の生活と義務
晴れて永住権を取得した後、あなたの生活はどう変わるのでしょうか。
メリットの再確認
在留期間の更新が不要
最大のメリットです。数年ごとに入管へ行くストレスから解放されます。
活動制限の撤廃
就労ビザでは制限されていた活動(例:単純労働、副業、起業、フリーランス活動)が、日本人と同様に自由に行えます。
社会的信用の向上
日本に永住する意思と許可がある証として、住宅ローンや事業ローンの審査が格段に通りやすくなります。
家族のビザ
あなたが永住者になると、あなたの配偶者やお子様は「永住者の配偶者等」という、活動制限のない有利なビザを取得することができます。
永住者としての義務(注意点)
永住権は「ゴール」ではなく、「新しいスタート」です。以下の義務は継続します。
在留カードの更新(7年ごと)
在留期間の更新は不要ですが、「在留カード」自体には有効期限(交付から7年間)があります。
これは運転免許証の更新と同じように、期限が切れる前に必ず更新しなければなりません。忘れると罰則や在留資格取消しの対象にさえなり得ます。
納税・公的義務
当然ながら、税金、年金、健康保険の支払いは引き続き義務です。
再入国許可
日本を出国する際は、必ず「再入国許可」または「みなし再入国許可」を受ける必要があります。これを受けずに出国すると、永住権は失効します。
みなし再入国
出国後1年以内に必ず日本に戻る場合。(在留カードを提示して出国)
再入国許可
1年を超えて(最大5年)出国する可能性がある場合。(事前に入管で許可を得る)
各種届出義務
引っ越し(住居地変更)、氏名・国籍の変更、所属機関(会社)の変更なども、従来通り届出が必要です。
7. おわりに
就労ビザから永住権への道のりは、決して簡単ではありません。特に、納税や年金といった公的義務の履行は、過去にさかのぼって慎重に審査されます。
「いつか永住権を取りたい」と考え始めたら、その瞬間からが準備のスタートです。日々の生活において、法律を守り、義務を誠実に果たし、日本社会の一員として安定した基盤を築いていること。永住許可申請とは、その「実績」を証明する作業に他なりません。
この記事で解説した要件や書類は非常に複雑です。ご自身の状況が要件を満たしているか不安な場合や、書類準備に膨大な時間がかかりそうな場合は、ビザ専門の行政書士など、専門家のサポートを受けることも有力な選択肢です。
あなたの日本での生活が、永住権の取得によってさらに安定し、豊かなものになることを心から願っています。



