相談者:留学生
日本の大学に通う留学生です。日本のIT企業に就職希望ですが、まだどこからも内定をもらっていません。卒業後も就職活動を頑張りたいのですが、このまま卒業式を迎えてしまったら、帰国しなければいけなくなりますか?
回答者:行政書士
いいえ、安心してください。すぐに帰国しなくても大丈夫です。卒業後も就職活動をする人のために、特定活動(継続就職活動)というビザがあります。もし卒業までに就職先が決まらなくても、必要な書類をそろえて申請すれば、就職活動を続けることができます。
卒業シーズンが近づき、周りの友人が次々と内定を決めていく中、まだ就職先が決まっていない焦り。「もし、卒業の日までに仕事が決まらなかったら、国へ帰らなければならないのか?」と、眠れない夜を過ごしている方もいるかもしれません。
また、「ビザの申請は卒業前じゃないといけないと聞いたけれど、もう間に合わない?」と不安に思っている方もいるでしょう。
結論から言います。安心してください。 日本の学校(大学・短大・専門学校)を卒業するあなたには、卒業後も日本に残って就職活動を続けるための「猶予期間」が与えられています。それが、在留資格「特定活動(継続就職活動)」です。
この記事では、このビザを取得するための条件や手続きに加え、多くの人が勘違いしている「申請のタイミング」についても詳しく解説します。正しい知識を持って、落ち着いて手続きを進めましょう。
目次
1. 特定活動(継続就職活動)ビザで何ができるのか?
まずは、この「特定活動(継続就職活動)」というビザを手に入れると、どのような生活ができるのかを理解しましょう。
1. 日本にいられる期間は「最長1年」
このビザに変更すると、原則として「6か月」の在留期間がもらえます。 もし半年で決まらなくても、1回だけ更新ができるため、「6か月 + 6か月 = 最長1年間」、日本で就職活動を続けることができます。
2. アルバイトができる(生活費の確保)
ここが非常に重要なポイントです。 このビザに変更した後、別途「資格外活動許可」を申請することで、留学生時代と同じように「週28時間以内」のアルバイトが認められます。 これにより、家賃や生活費を自分で稼ぎながら、経済的な心配を減らして就職活動に専念できます。
3. 対象となる人
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日本の大学(学部)、大学院(修士・博士)、短期大学を卒業した人
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日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」の称号を得た人
※「研究生」「聴講生」「科目等履修生」のみの期間や、日本語学校卒業のみの場合は、この制度の対象にはなりません(※日本語学校卒については後述の補足参照)。
2. 申請のタイミングは「卒業後」で大丈夫
~「ビザがなくなる」という誤解を解く~
ここが最も多くの留学生が不安に思うポイントです。 「就職が決まった友達は、卒業前にビザ申請をしている。自分も急がないと不法滞在になるのでは?」
いいえ、そんなことはありません。 就職が決まった人と、決まっていない人では、申請のルールが違うのです。
1. 「就職が決まった人」と「決まっていない人」の違い
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就職が決まった人(就労ビザへの変更)
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申請時期:12月~3月頃(卒業前)
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書類:まだ卒業していないので「卒業見込証明書」を使って申請します。
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あなた(特定活動ビザへの変更)
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申請時期:3月~4月頃(卒業式が終わった後すぐ)
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書類:原則として「卒業証書(または卒業証明書)」が必要です。
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なぜなら、この「特定活動」ビザは、「卒業したけれど就職できなかった人」を救済するための制度だからです。大学側も、「本当に卒業できたか」が確定しないと、責任を持って推薦状を出せません。そのため、卒業式の日(または卒業判定が出た直後)に推薦状と卒業証書をもらい、その足で入管に行くのが一般的です。
なお、卒業前であっても、大学側からの推薦状、卒業見込み証明書や、その他の必要書類がそろっていれば、在留資格変更許可申請が可能ですが、その場合、在留資格変更許可時に、卒業証書(写し)又は卒業証明書が必要になります。
2. 「卒業=ビザ消滅」ではありません
「卒業した瞬間にビザが無効になって、捕まってしまうのでは?」と心配する必要はありません。
あなたの在留カードに書いてある「在留期間(満了日)」を見てください。その日付までは、卒業後であっても日本に滞在すること自体は適法です。 ただし、卒業した時点で「留学」という活動目的は終わっていますので、「卒業後、なるべく早く(2週間〜1ヶ月以内を目安に)」変更申請を行えば、法的に全く問題ありません。
3. 【要注意】在留期限が「卒業式より前」の人
例外的に注意が必要なのは、在留カードの期限が「卒業式より前の日」、「卒業式と同じ日」になっている人や、「卒業式の数日後」になっている人です。 この場合は、卒業を待っていると期限切れ(オーバーステイ)になってしまいます。 これに当てはまる人は、卒業式の前に入管へ行き、「もうすぐ卒業ですが、期限が来てしまうので更新または変更したい」と相談してください。特例的な対応が必要になります。
3. ビザをもらうための「3つの条件」
このビザは、「卒業すれば誰でも自動的にもらえる」ものではありません。以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件①:在学中から就職活動をしていたこと
入管は、「卒業してから就活を始めよう」という人を認めていません。 「在学中から頑張っていたけれど、残念ながら決まらなかった」という人が対象です。 そのため、エントリーシートの控え、説明会の予約メール、面接の結果通知(不採用メール)などの証拠資料が必要です。
条件②:学校からの「推薦状」があること
あなたが卒業する大学や専門学校が、「この学生は真面目であり、卒業後も学校が責任を持って指導・連絡を行います」という推薦状を発行してくれなければ、申請はできません。
条件③:経費支弁能力(お金)があること
就職活動中の生活費をどうするのか、という点です。 「アルバイトをするので大丈夫です」という説明だけでは弱いです。預金通帳の残高を見せるか、親からの送金証明などを提出し、「当面の生活費はある」ことを証明する必要があります。
4. 審査の注意ポイント(学校別)
大学卒と専門学校卒では、審査の厳しさが異なります。ご自身の学校種別に合わせて確認してください。
大学・大学院・短大を卒業する方
比較的、スムーズに許可が下りやすい傾向にあります。
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ポイント:学部や専攻に関わらず、広く「就職活動」を行うことが認められます。
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注意点:成績があまりに悪く、単位ギリギリで卒業した場合などは、大学側が推薦状の発行を渋るケースがあります。早めにキャリアセンターに相談しましょう。
専門学校を卒業する方
大学卒に比べて、審査は厳格になります。
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ポイント①:「専門士」の称号 卒業と同時に「専門士」の称号が付与されることが絶対条件です。成績不良で卒業だけ(称号なし)の場合は申請できません。
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ポイント②:職種と専攻の一致 ここが一番重要です。「専門学校で学んだ内容」と「探している仕事の内容」がリンクしていなければなりません。
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NG例:アニメーション科卒なのに、無関係な一般事務や、飲食店のホールスタッフを探している。
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OK例:ホテル科卒で、ホテル業界を目指している。 申請時に「どのような職種を希望しているか」を申告する必要があり、それが専攻とズレていると許可されません。
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5. 申請に必要な書類リスト
卒業式が終わったら、すぐに申請に行けるよう、早めに準備を始めましょう。
1. 自分で用意するもの
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在留資格変更許可申請書(「特定活動」用の様式)
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写真(縦4cm×横3cm)
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パスポート・在留カード(窓口で提示)
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経費支弁能力を証する文書
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銀行の通帳の写し(直近の残高と、お金の動きがわかるページ)など。
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就職活動を行っていることを明らかにする資料
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選考結果の通知(不採用メールなど)、会社説明会の予約票、エントリーシートの控えなど。これらをプリントアウトしてまとめておきます。
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2. 学校に発行してもらうもの
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推薦状
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これがないと申請できません。
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卒業証明書(または卒業証書)
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原本提示を求められることがあります。
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(専門学校のみ)専門士称号授与証明書
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(専門学校のみ)成績証明書
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専攻内容を確認するために必要です。
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6. 手続きの流れ
ステップ1:卒業前に学校へ相談(1月~2月頃)
卒業の1~2か月前には、大学のキャリアセンターや専門学校の留学生担当窓口に行きましょう。 「就職が決まらないので、特定活動ビザに切り替えたい。推薦状の発行をお願いします」と依頼します。 ※学校によっては、学内審査や面談が必要な場合があります。
ステップ2:卒業式&書類受取(3月)
卒業式で「卒業証書」を受け取ります。同時に、依頼していた「推薦状」も受け取ります。
ステップ3:入管へ申請(卒業後すぐ)
書類が揃ったら、速やかに管轄の出入国在留管理局へ行きます。 在留期限が残っていても、卒業後は「留学ビザ」の根拠がなくなっています。空白期間を空けず、卒業後すぐ(遅くとも2週間以内)に申請してください。
【注意】「空白期間」でのアルバイトはできない
申請の前後で、最も注意していただきたいのがアルバイトです。
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卒業した瞬間: これまで持っていた留学ビザの「資格外活動許可(週28時間)」は、学校に在籍していることが前提のため、卒業と同時に効力を失うと考えられています。
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申請中: 特定活動ビザへの変更申請中は、まだ新しいビザになっていません。
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結論: 「卒業式の日」から「特定活動の許可が下りて、新しい資格外活動許可をもらう日」までの間は、アルバイトをすることができません。
この期間(約2週間~1か月)に働いてしまうと「不法就労」とみなされ、特定活動ビザ自体が不許可になるリスクがあります。店長に事情を説明し、この期間はシフトを外してもらってください。
7. もし1年で就職先が決まらなかったら?
最後に、標準の1年(6か月×2回)でも就職が決まらなかった場合や、特殊なケースについて補足します。
1. 地方自治体の支援事業(2年目へ)
1年頑張っても決まらなかった場合、「地方公共団体(都道府県や市町村)」が実施している就職支援プログラムに参加することで、さらに1年の延長(卒業後通算2年)が認められる制度があります。
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手続き:学校の推薦状ではなく、自治体からの推薦状(対象者証明書)をもらって更新申請をします。
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実施自治体:東京都、愛知県、大阪府、福岡県など多数。1年目の期限が切れる前に、住んでいる地域の自治体に相談してみましょう。
2. 海外の大学卒+日本語学校卒の場合
原則として日本語学校卒のみではこのビザの対象外ですが、もしあなたが「海外の大学(学士以上)」を卒業しており、かつ「認定日本語教育機関」を卒業する場合は、特例として特定活動ビザの対象になる可能性があります。学校に確認してみてください。
8. おわりに
「就職が決まらない」というのは、とても不安で辛いことだと思います。 しかし、日本政府は「日本の学校を卒業したあなた」を貴重な人材だと考えています。だからこそ、この「特定活動」という制度を用意して、日本に残れるチャンスを与えているのです。
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「卒業後の申請」で大丈夫です。
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焦ってブラック企業に入ったり、諦めてすぐに帰国する必要はありません。
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ただし、「空白期間」のアルバイトだけはしないでください。
このルールを守り、正しい手続きを行えば、あなたにはまだ十分な時間が残されています。 まずは学校の先生やキャリアセンターに相談し、推薦状の手続きを進めてください。
もし、手続きが正しくできるかどうか心配だったり、忙しくて書類を書いたり入管に行ったりする時間がない場合は、入管手続きを専門とする当事務所にご相談ください。
相談は無料で承っております。相談してみた結果、「やはり自分でやることにした」「他の事務所に頼むことにした」となっても大丈夫です。あとからお電話やメールで勧誘することもありませんので、安心してご相談ください。
あなたの就職活動が実を結び、日本で活躍される日が来ることを心より応援しております。



