相談者:英会話スクールの30代男性講師
英会話スクールで英語を教える仕事は楽しくてやりがいはあります。でも最近は物価高のためもあって、講師の給料だけでは生活に余裕がありません。そこで、空いている時間にコンビニなどでちょっとアルバイトをして生活費の足しにしたいと思っているのですが、なにか問題ありますか?
回答者:行政書士
最近はなんでもモノの値段が上がって、生活するのがだんだん大変になってきていますよね。副業でアルバイトをして収入を増やしたいと思う方も多いと思います。でも、いまお持ちの就労資格で決められた範囲を超える仕事をすることは基本的にはできません。アルバイトとしてできること、できないこと、その他注意点などをご説明いたします。
日本の企業で働く外国人の皆さま、毎日の仕事お疲れ様です。 円安や物価高の影響で、日本での生活費や母国への送金が厳しくなり、「今の給料だけでは足りない」と悩んでいませんか?
「仕事が終わった後の時間や土日を使って、Uber Eats(ウーバーイーツ)で配達をしたい」 「近所のコンビニで週に数回アルバイトをしたい」
そう考えるのは自然なことですが、ちょっとお待ちください。 そのアルバイト、あなたのビザ(在留資格)で本当にやって大丈夫でしょうか?
結論から言うと、就労ビザを持っている外国人がコンビニやUber Eatsなどの「単純労働」のアルバイトをすることは、原則として認められていません。 軽い気持ちで始めたアルバイトが原因で、ビザの更新が不許可になり、日本にいられなくなる可能性もあります。
この記事では、「なぜダメなのか」「どうすれば副業ができるのか」「バレたらどうなるのか」について、法律の仕組みからリスクまで、行政書士が解説いたします。 あなたの日本での生活を守るために、アルバイトに応募する前に必ず読んでください。
目次
1. 大原則「あなたのビザは、その仕事をするための許可証ではない」
まず、日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)の基本ルールを思い出してください。 あなたが持っている在留資格(ビザ)は、おそらく「技術・人文知識・国際業務」ではないでしょうか?
このビザは、大学などで学んだ専門知識を活かす仕事(エンジニア、通訳、貿易事務、マーケティングなど)をするために許可されたものです。 入管法では、「許可された活動以外の仕事をして報酬を得てはいけない」と厳しく定められています。
コンビニやUber Eatsは「単純労働」
ここで問題になるのが、仕事の内容です。
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コンビニのレジ打ち・品出し
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Uber Eatsなどのフードデリバリー
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飲食店のホール・皿洗い
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工場のライン作業
これらは、入管法上では「単純労働(たんじゅんろうどう)」とみなされます。 「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、これらの単純労働を行うことは認められていません。
「でも、留学生の時はコンビニでバイトしていたよ?」 そう思うかもしれません。しかし、「留学ビザ」と「就労ビザ(正社員)」はルールが全く違います。
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留学ビザ・家族滞在: 「資格外活動許可(包括許可)」を取れば、週28時間以内なら職種を問わず(風俗以外)アルバイトができます。
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就労ビザ: すでにフルタイムで働くためのビザを持っているので、留学生のような「何でもできる許可」は下りません。
つまり、今のビザのままUber Eatsやコンビニバイトをすると、「資格外活動違反(不法就労)」となり、犯罪になってしまう可能性があるのです。
2. どうしても副業したい! 許可を取る方法はある?
とはいえ、「ビザの範囲外だからダメ」というのは原則ですが、例外的に許可をもらう手続きがあります。 それが「資格外活動許可(しかくがいかつどうきょか)」です。
しかし、就労ビザを持つ人がこの許可を取るのは、非常にハードルが高いのが現実です。
1. 留学生とは違う「個別許可」
就労ビザの人が申請する場合、留学生のような「週28時間以内ならどこでもOK」という許可(包括許可)はもらえません。「どこの会社で」「どんな内容の仕事をするか」を指定して申請する「個別許可」になります。
2. コンビニやUber Eatsの許可は下りる?
ここが一番重要なポイントです。 就労ビザを持つ人が、「生活費が足りないから」という理由で、コンビニやUberなどの単純労働をするための資格外活動許可を申請しても、不許可になる可能性が高いです。
なぜなら、入管はこのように考えるためです。
「あなたは『技術・人文知識・国際業務』という高度な仕事をする条件で日本に呼んだはずだ。単純労働をするなら、そのビザはふさわしくない」 「本業の給料だけで生活できないような会社にいるなら、副業ではなく、もっと給料の良い会社に転職したらどうですか」
したがって、「単純労働の副業」を合法的に行う方法は、基本的にはないと考えてください。(※例外として、地方自治体からの依頼など公共性の高い活動の場合は認められることもありますが、個人の金銭的理由では無理です)
3. これが「OK」になる副業パターン
では、就労ビザの人は絶対に副業ができないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。「内容」によっては可能です。
パターンA:今のビザの「範囲内」の副業
あなたが持っている「技術・人文知識・国際業務」の範囲に含まれる仕事であれば、資格外活動許可を取らなくても副業が可能です。
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ITエンジニアが、週末に友人の会社のシステム開発を手伝う。
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通訳の社員が、休日に翻訳のアルバイトをする。
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英会話スクールの講師が、個人でオンライン英会話レッスンをする。
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これらは「専門知識を活かす業務」なので、今のビザの活動範囲内です。ただし、アルバイト先と雇用契約を結ぶ場合、入管に対して「所属機関等に関する届出」が必要になります。契約から14日以内に出さなければなりませんので、ご注意ください。
パターンB:資格外活動許可が取れる副業(単純労働以外)
今のビザの範囲外であっても、「単純労働ではない」専門的な仕事であれば、許可が下りる可能性があります。
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企業で働く会社員が、大学で非常勤講師をする(「教育」ビザの分野)。
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デザイナーが、イラスト教室の先生をする。
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このように、「あなたの専門性を活かした副業」であれば道は開かれています。しかし、「誰でもできる仕事(単純労働)」は、やはりNGです。
4. もし隠れてバイトをしたら? 待ち受ける3つのリスク
「許可が取れないなら、内緒でやればいいや」 「現金手渡しのバイトならバレないだろう」 「Uber Eatsのアカウントを友達に借りてやろう」
これらは絶対にやめてください。 日本の役所や入管の調査能力を甘く見てはいけません。どのようにしてバレて、その後どうなるのかを解説します。
リスク1:ビザの更新が「不許可」になる
これが最大のリスクです。 ビザの更新申請の際、「課税証明書(かぜいしょうめいしょ)」を提出します。ここには、あなたの1年間の総所得が記載されています。
入管審査官はプロです。 「本業の会社からの給料は年収300万円のはずなのに、課税証明書の所得は380万円になっている。この差額の80万円はなんだ?」 とすぐに気づきます。
そこで追加説明を求められ、「実はバイトをしていました」と白状すれば、資格外活動違反で更新不許可です。「知りませんでした」という言い訳は通用しません。更新が不許可になれば、家族も含めて帰国しなければなりません。
リスク2:会社にバレて「解雇」される
多くの日本の会社は、就業規則で「副業禁止」にしています。 副業をすると、住民税の金額が変わるため、会社の給与担当者に「あれ? この人だけ住民税が高いな。他に収入があるな」と気づかれます(住民税は給料から天引きされるため、会社に通知が行くからです)。
会社に無断で副業をしていたことがバレれば、懲戒処分の対象になります。 さらに、それが「不法就労(ビザ違反のバイト)」だった場合、会社はあなたを雇用し続けるリスクを恐れ、懲戒解雇(クビ)にする可能性さえあります。 ビザ違反で、しかも職も失うという最悪の事態になりかねません。
リスク3:Uber Eatsなどの「アカウント名義の貸し借り」は犯罪
「自分のビザでは登録できないから、日本人や永住者の友人のアカウントを借りて配達しよう」 これは入管法違反だけでなく、刑法上の犯罪(詐欺罪など)や、不法就労助長罪に関わる違法行為です。 警察沙汰になれば、逮捕・起訴され、退去強制(強制送還)の対象になります。絶対に手を出してはいけません。
5. お金が足りない時、どうすればいい?
「ダメなことは分かった。でも、生活が苦しいんです」 その気持ちは痛いほど分かります。では、合法的に状況を変えるにはどうすればいいでしょうか。
解決策1:今の会社と交渉する
まずは、現在の会社に給料アップの相談をしてみてください。 また、残業を増やすことで収入が上がるなら、それが一番安全な方法です(もちろん過労には注意が必要ですが)。
解決策2. :「転職」をする
今の会社の給料で生活できないのであれば、もっと給料の高い会社に転職するのが、最も正攻法で安全な解決策です。 「技術・人文知識・国際業務」のビザを持っていれば、同じ職種(エンジニアならエンジニア、翻訳なら翻訳)であれば、転職は自由にできます。
副業で月5万円稼ぐためにビザを失うリスクを冒すより、月給が5万円高い会社に転職する方が、ビザの観点からもキャリアの観点からもずっと健全です。
解決策3.:固定費を見直す
ひねりのない話にはなりますが、収入を増やすのが難しいなら、支出を減らすしかありません。
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家賃の安いアパートに引っ越す。
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格安SIMに変える。
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自炊を増やす。 地味ですが、ビザを失うリスクゼロで生活を楽にする方法です。
6. まとめ
最後に、もう一度要点をまとめておきます。
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原則禁止:就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)で、コンビニやUber Eatsなどの単純労働アルバイトはできません。
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許可は下りない:「生活費不足」を理由に資格外活動許可を申請しても、不許可になります。
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バレる理由:住民税の金額やマイナンバーから、入管や会社に必ずバレます。
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ペナルティ:バレたらビザ更新不許可、強制帰国、会社の解雇につながります。
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解決策:リスクを冒して副業するより、「転職」で年収アップを目指してください。
日本で長く安心して暮らすためには、「目先のお金」よりも「ビザの安全」が何より大切です。 「みんなやっているから大丈夫」という甘い言葉に騙されないでください。摘発されるときは一人ですし、誰も助けてくれません。
もし、「今の仕事に関連する副業をしたいけれど、ビザの範囲内かどうかわからない」「転職する場合の手続きを知りたい」という場合は、自己判断せず、ビザの手続きを専門とする当事務所にご相談ください。
相談は無料で承ります。相談してみた結果、「自分で手続きをやってみます」とか「他の事務所に依頼します」となっても大丈夫です。あとから電話やメールでしつこくご連絡することもありませんので、ご安心ください。
あなたの日本での生活が、安全で豊かなものになることを心から願っています。



