目次
1. 手数料20万円になった後でも急いだほうがいい理由
「3年の在留期間を持っていれば、永住の申請、来年の3月までに出せばいいですよね?」
最近こういった確認をいただくことが増えています。3年の在留期間を持っている人が永住許可申請をできる期限が、「2027年3月末まで」と発表されているからです。
1万円の手数料で永住許可申請ができたのは2026年9月末までです。10月からの申請分には20万円の手数料が必要になりますが、3年の在留期間を持っている人の場合、たとえ20万を払えるとしても申請すらできなくなるリミットが近づいているのです。
この記事では、3年の在留期間を持ちながら永住申請を検討している方に向けて、経過措置の正確な内容とそのリスク、そして今月から動き出すべき理由を、できる限りわかりやすくお伝えします。
2. ガイドライン改訂を振り返る
2026年2月24日、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン」を改訂しました。
永住許可の要件の一つに「現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること」という規定があります。技術・人文知識・国際業務や配偶者ビザなど多くの在留資格では、最長の在留期間は5年です。
しかしこれまでの実務上の運用では、3年の在留期間であっても「最長の在留期間」に準ずるものとして取り扱われてきた経緯がありました。公式なルールとしては定まっていなかったものの、現実の申請では3年ビザのままでも永住申請が受け付けられ、許可されてきたのです。
今回のガイドライン改訂は、この「事実上の容認」に明確な期限を設けたという点で、実質的な厳格化です。
改訂後の原則は明快です。「2027年4月1日以降、在留期間3年での永住申請は原則として認めない。最長の在留期間(多くの場合5年)をもって在留していることが必要」となります。
ただし、急激な変更による混乱を防ぐために、二段階の経過措置が設けられています。
3. 「3月31日」には二つの意味がある
ガイドラインをよく読むと、経過措置は一つではなく、二つの段階に分かれていることがわかります。この点を正確に理解しているかどうかで、今後の対応が大きく変わります。
第一段階:2027年3月31日までに申請する場合
2027年3月31日までの間は、現在3年の在留期間を持っている方であれば、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。つまり、3年ビザのままでも、この期限内に申請を受け付けてもらえれば、在留期間の要件については問題なく審査が進みます。
これが「第一段階の経過措置」です。多くの方がイメージする「3月31日まで」とはこのことを指しています。
第二段階:2027年3月31日時点で3年ビザを持っている人への特例
ガイドラインには次のような規定があります。
「令和9年3月31日時点において在留期間3年を有する者からの永住許可申請については、当該在留期間内に処分を受ける場合においては、その初回に限り、最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱う」
つまり、2027年3月31日の時点で3年の在留期間カードを持っている方は、そのカードの有効期限内であれば申請を出すことができます。これが「第二段階の特例」です。
ただし、ここに非常に重要な条件が二つついています。「当該在留期間内に処分を受ける場合」、そして「初回に限り」という条件です。次の章でこの二つの条件が意味することを詳しく説明します。
4. 「在留期限内・初回限定」の意味
「3月31日時点で3年ビザさえ持っていれば、その有効期限まで余裕があるから大丈夫」と考えると、大きな落とし穴にはまります。この特例には、現実的に非常に厳しい条件が伴っています。
リスク① 審査中にカードの有効期限が切れると申請が終わる
特例の条件は「当該在留期間内に処分を受けること」です。永住許可の審査期間は通常4ヶ月から1年かかります。つまり、2027年3月31日時点での3年ビザの残存期間が短ければ、審査が終わる前にカードの有効期限が来てしまいます。
たとえば2027年3月31日時点で在留期限が2027年9月末だとします。そこから申請を出しても、審査に1年かかれば、2027年9月を過ぎてしまいますので、当然間に合いません。
この特例を安全に活用するためには、2027年3月31日時点で少なくとも1年以上の残存有効期間がある状態が望ましいとされています。カードの残存期間が短い方にとっては、事実上この特例は使えない可能性があります。
リスク② 不許可になっても再挑戦できない
「初回に限り」という条件は、非常に厳しい意味を持ちます。この特例を使って申請したものの不許可になった場合、同じ3年ビザで再申請することはできません。
永住申請は、書類が不十分、税金・年金の納付状況に問題がある、在留期間が足りないなど、さまざまな理由で不許可になることがあります。通常であれば不許可後に修正して再申請することができますが、この特例では「一発勝負」になります。
十分な準備を整えないまま「とりあえず出しておこう」という発想で申請すると、次のチャンスを自ら潰してしまうことになりかねません。
リスク③ 更新して1年になった場合、次の申請まで長い道のりが必要
仮に特例を使わず、カードの有効期限が来て更新した場合を考えてみます。このとき更新で「5年」が付与されれば原則要件を満たしますが、「1年」または「3年」しか付与されなかった場合は、また次に5年が取れるまで待つことになります。
つまり第二段階の特例を「後でいい」と先送りにしているうちに、気づいたらどの選択肢も取りづらくなっていた、という状況になりうるのです。
これらのリスクを考えると、第二段階の特例はあくまで「やむを得ない場合の最後の手段」と位置づけ、可能な限り第一段階の経過措置が有効な2027年3月31日までに申請を受け付けてもらうことが、最も確実な選択です。
5. 手数料改定とのダブルパンチ
さらにもう一つ、大きな変化がありました。
2026年10月1日から、永住許可申請の手数料が10,000円から200,000円へと引き上げられました。20倍です。これは改正入管法に基づく政令改正により正式に決定したものであり、10月1日以降に受け付けられた申請はすべて新料金が適用されます。
つまり今月以降に永住許可申請を出す方は、許可が下りた際に20万円を納付することになります。なお、手数料は申請時点ではなく、許可が下りた後に収入印紙またはコンビニ・銀行決済で支払うものです。
20万円は決して小さな金額ではありません。しかし、永住許可を取得することで得られる安定・メリットと比較すれば、適切な準備をして確実に許可を取りに行くことの価値のほうがはるかに大きいはずです。「費用が高いから」と先送りにして要件を失うよりも、今動いて確実に許可を得るほうが、長い目で見て合理的な判断といえます。
6. いつまでに何をするか
以上を踏まえて、10月から逆算したタイムラインを整理します。
10月〜11月 要件の確認・必要書類の洗い出しを開始してください。自分が現時点で要件を満たしているかどうかの確認、特に住民税・所得税の納付状況・年金の納付状況の確認を先行させることが重要です。問題があればこの段階で解消に向けて動きます。この段階で行政書士に相談をしておくと、不安なく準備が進められると思います。
11月〜12月 書類の収集を進めます。課税証明書・納税証明書(直近5年分)、年金関係の書類、在職証明書などを揃えていきます。理由書(永住理由書)の作成もこの時期に行います。
2027年1月~2月 申請書類の最終確認を行い、入管へ提出します。3月は駆け込みで申請する方が増えることが予想されます。2月までに申請を済ませることが、混雑を避けられる面でも望ましいです。
2027年3月31日 第一段階の経過措置が終了。この時点でまだ審査中であっても、申請が期限内に受け付けられていれば要件上は問題ありません。
2027年4月以降 3年ビザを持っている方への第二段階の特例が適用される段階ですが、前述のリスクがあります。第一段階での申請完了を目指してください。
このタイムラインを見れば、「まだ時間がある」というほど時間があるわけではないことがお分かりいただけると思います。永住許可の申請を考えている方は、なるべく早く動き始めましょう。
7. おわりに
「自分は要件を満たしているかどうかもわからない」という段階でも、行政書士への相談は早いほど意味があります。
永住申請は、書類を揃えれば機械的に許可が出るものではありません。税金・年金の納付状況、在留期間中の出国歴、雇用の安定性、家族構成など、個別の事情によって審査の見方は変わります。「準備が整ってから相談しよう」と思っているうちに申請のタイミングを逃してしまうケースが、毎年必ず発生します。
今回の経過措置終了は期限が明確で、先送りにできる猶予が実質的に残り数ヶ月しかありません。「相談するだけ」という気持ちで、まずは一度ご連絡ください。現在の状況をお聞きした上で、申請できるかどうか、するとすればいつが最適か、何を準備すべきかを具体的にお伝えします。
★2026年10月の制度改定については、くわしくはこちらの記事をお読みください。
「何がどう変わった?」2026年10月からの在留資格・永住許可の新基準を徹底整理



