外国人社員のビザ更新手数料、会社が負担すべき?人事担当者のための判断ガイド

1. 「うちは関係ない」では済まない時代になった

2026年10月1日から、在留資格の変更・更新にかかる手数料が大幅に引き上げられました。これまで一律6,000円だったものが、1年許可で33,000円、3年許可で64,000円、5年許可で75,000円と、最大で12倍以上になっています。

この値上げを受けて、外国人社員を雇用する企業の経営者・人事担当者の方から「手数料は会社が負担すべきですか?」「これまで本人任せにしていたけれど、変えたほうがいいですか?」というご相談をいただくようになっています。

結論から言えば、会社が負担する法律上の義務はありません。しかし「義務ではないから払わなくていい」と判断してしまうと、会社にとって思わぬリスクが生じる可能性があります。この記事では、費用負担の判断に必要な視点を整理します。

 

2. まず費用感を把握する

判断の前提として、今回の改定でどのくらいの費用が発生するかを確認しておきましょう。
下の表は、代表的なホワイトカラー人材の在留資格「技術・人文知識・国際業務」の一般的な在留期間です。

許可される在留期間 窓口申請 オンライン申請
1年 33,000円 27,000円
3年以上〜5年未満 64,000円 56,000円
5年以上 75,000円 65,000円

たとえば外国人社員が3名いて、全員が1年許可の場合、年間の手数料合計は99,000円(窓口申請)です。5年許可が出る社員が3名いれば、その更新年には225,000円かかります。人数が増えるほど、また許可期間が長くなるほど、金額は大きくなります。

また更新は毎年同じ社員に発生するわけではなく、在留期限が分散しているため、年によって費用の偏りが出ます。複数の外国人社員を雇用している企業は、年間ベースの予算を把握しておくことをお勧めします。

 

3. 会社が負担する「積極的な理由」

法律上の義務がないにもかかわらず、多くの企業が費用負担を選択しています。その理由は大きく四つあります。

理由① 本人任せにすると申請遅延・不法就労のリスクがある

これが最も重要な理由です。手数料が高額になった結果、「費用がかかるから後回しにしよう」と考える外国人社員が出てきます。在留期限を過ぎてからの申請はオーバーステイとなり、その状態で就労を続けると会社は不法就労助長の責任を問われます。これは3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰を伴う規定です。「知らなかった」は免責になりません。

手数料を会社が負担することで、社員が費用を理由に申請を先延ばしにするリスクを実質的に排除できます。コンプライアンスの観点から、費用負担はリスク管理の一環ともいえます。

理由② 優秀な外国人人材の採用・定着につながる

外国人社員の採用競争は激しさを増しています。同じような条件の企業が複数あるとき、「ビザの手数料を会社が出してくれるかどうか」は、特に手続きに不安を感じている外国人にとって判断材料の一つになります。

また、すでに雇用している外国人社員にとっても、手数料負担は「この会社は長く働いてほしいと思ってくれている」というシグナルになります。定着率の向上は採用コストの削減にも直結します。

理由③ 在留資格は会社の利益のためでもある

在留資格は、その外国人社員が「日本で合法的に働ける状態」を維持するためのものです。つまり、在留資格の維持は外国人社員個人の問題であると同時に、その社員を雇用し続けるための条件でもあります。

この視点に立てば、更新手数料は「社員の個人的な費用」ではなく「会社が人材を確保するための業務関連費用」として位置づけることもできます。

理由④ 手続きへの関与で在留管理が適切になる

費用を会社が負担することで、更新のタイミングを会社が把握しやすくなります。「費用を出すから更新時期になったら必ず報告するように」というルールを設けることで、在留期限の管理が会社主導になり、申請漏れを防ぐ仕組みが自然にできあがります。

 

4. 会社が負担しない場合の「現実的なリスク」

費用を本人負担とする場合も、以下の点は会社として必ず対応しておく必要があります。

値上げの内容を必ず本人に周知する

今回の改定を知らないまま更新時期を迎えると、「思っていた額と全然違う」という混乱が生じます。本人負担とする場合でも、改定内容・金額・支払い方法の変更点を事前に説明しておくことは会社の責任といえます。

在留期限の管理は会社が行う

費用の負担を本人に任せても、在留期限の管理まで本人任せにしてはいけません。在留期限が近づいたら会社から声をかけ、申請状況を確認する運用を整えてください。

本人が費用を工面できない場合の対応を決めておく

急な出費で手数料が払えないという状況が生じた場合に備えて、「立替払いをして給与から分割で差し引く」「一時的に前払いする」など、緊急時の対応方針を事前に決めておくとトラブルを防げます。

 

5. 費用負担の「三つのパターン」と特徴

企業の実務では、主に以下の三つのパターンが採用されています。自社の規模・外国人社員の人数・採用方針に合わせて選択してください。

パターン①:全額会社負担

最もシンプルで社員への配慮が伝わりやすい方法です。更新手数料を全額会社が支払います。申請遅延・不法就労のリスクを最小化でき、管理もしやすくなります。人数が少なく、採用・定着を重視する企業に向いています。

パターン②:一部補助(上限設定)

「1回あたり上限〇万円まで補助」という形で一部を会社が負担します。会社の費用負担を抑えながら、社員にサポートの姿勢を示せます。許可期間によって手数料が大きく変わる今の仕組みでは、上限額の設定に工夫が必要です。

パターン③:本人負担(会社は管理のみ)

手数料は本人が支払い、会社は在留期限の管理と申請時期の声かけのみ行うパターンです。コストを抑えられますが、前述のリスク管理を徹底する必要があります。外国人社員の人数が多く費用総額が大きい企業や、待遇が個人単位で異なる企業に選ばれることがあります。

 

6. 費用負担と税務・給与の関係

会社が外国人社員の更新手数料を負担する場合、税務上の取り扱いについても整理しておく必要があります。

福利厚生費として処理できる場合

外国人社員全員に対して一律で適用されるルールとして運用する場合は、福利厚生費として計上できる可能性があります。特定の社員にだけ負担する場合や、恣意的な運用になっている場合は、給与として扱われる可能性があります。

社員への課税の問題

会社が手数料を負担した場合、その金額が社員にとって「経済的利益」として給与所得に含まれる可能性があります。この点については、自社の税務顧問に確認のうえ、処理方針を決めることをお勧めします。

 

7. 社内ルールを明文化する

「これまで曖昧にしてきた」という会社も多いですが、今回の大幅値上げを機に、ルールを明文化することをお勧めします。

就業規則または別途の「外国人社員雇用に関する規程」として、以下の内容を明記しておくと、社員との間のトラブルを防ぎ、採用時の説明もしやすくなります。

手数料の負担について(全額・一部・本人負担のどれか)、在留期限の管理と報告のルール(期限の何ヶ月前に誰に報告するか)、申請費用を会社が立て替える場合の精算方法、家族の在留資格についての対応方針です。

明文化されていないルールは、担当者が変わるたびに運用がブレ、「前任者の時はこうだった」という混乱の原因になります。今が整備する絶好のタイミングといえます。

 

8. まとめ

今回の手数料改定は、外国人社員の費用負担の問題をこれまで以上に重要な経営課題として浮上させました。費用を誰が負担するかという表面的な問題にとどまらず、在留管理の体制・採用・定着・コンプライアンスのあり方全体を見直す機会としてとらえていただければと思います。

「どうすればよいかわからない」「自社の状況に合った方針を決めたい」という方は、入管申請を専門とする当事務所にご相談ください。外国人雇用の実態を踏まえた具体的なアドバイスをお伝えできます。

★2026年10月の更新手数料の改定については、こちらの記事もご参照ください。
2026年10月以降に在留資格を更新する方へ。手数料・支払い方法の完全ガイド

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